「ゴールデンカムイ」が完結した。読んでいた感じたのはえらく成熟した人が描いた娯楽漫画だってこと。不思議な変態さんたちや動物やアイヌのグルメなんかが楽しく描かれているけど、常に子供たちのことを念頭に描かれている視線を感じるからだ。
なんでも、主人公たちの殺戮の場面では子供であるアシㇼパさんが常に登場しない形で配慮されているとも聞く。
作中でヒロインであるアイヌの少女アシㇼパのおばあさんフチが、主人公で彼女の相棒である杉元佐一にアイヌ語でヒロインを託す言葉を発する。しかし、その言葉がわからない杉元はアシㇼパさんは皆に愛されていて大切にされているから頼むと解釈する。
解説書である「アイヌ文化で読み解くゴールデンカムイ」でアイヌ文化研究家である中川裕さんが指摘していた。
このずれはゴールデンカムイのラストをすでに予言していたのだなって思う。
この漫画のなかでは父性の話が何度か出てくる。
まず、アシㇼパさんとアイヌとポーランド人の混血で革命家である父ウィルク。
そして、疑似父性で兵士たちを動かし、理想の国家を願う鶴見中尉。
彼らの父性とは相手を子ども扱いして指導し同化することなんかな。違うよね。それがより良い未来を目指している形をしていても。
ところでフチはアイヌ語で杉元にアシㇼパを嫁にもらってほしいと言っていたのだ。それが彼女を保護することと信じていたから。
しかし、彼は大きな意味で彼女に寄り添うことに翻案したのだ。アシㇼパの背景にあるのは未来で、それは支配できない。
新しいアイヌの女を目指す彼女には似合わないのだ。