oohama5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと思っています

やり過ごすこと「きみはいい子」

 子供たちをはぐくむ大人たちの困難までをえがいた中脇初枝の原作小説「きみはいい子」は、地味な小説のようだ。けれども、本屋大賞の候補にえらばれたりと、じわじわと読まれているようだ。それを呉美保監督が映画化した。

 主人公の高良健吾演じる新任教師は、こどもたちになめられ、親にからまれる、ちょっと頼りない男だ。こどもの虐待に気づいても、親を刺激するような幼い対応しかできない。では、まわりの教師たちはといえば、やはり、場当たり的な対応しかできないのだ。ぼけた孤独なおばあさんが障害のあるこどもと親を慰めたりする。でも、彼女のぼけがどう変わるわけでもない。みんな何か、欠落している。そんな話がオムニバスで続く。なにも解決しない、しかし、曇り空がつづく空にふと青空がのぞくように希望がみえる、そんな映画だ。

 尾野真千子演じる幼い子を虐待した母をなぐさめるママ友を池脇千鶴、そして、その夫で能天気に明るい障害児学級の教師を、高橋和也が演じている。呉監督の前作「そこのみにて光輝く」の痛ましいカップルのふたりですね。彼らが演じることで、そういった人々も立ち直れる希望を示したかったのだろうな。最後、教師が欠席した虐待をされているらしいこどもの家に走っていく姿が延々と描かれる。そして、何日分の新聞がはさまれたすさんだアパートのノックをする。困難があってもノックするしかないですね、状況を動かすのは。前作も感じたんだけど、俳優さんの印象がとても残る。何年か後に、出てきた俳優さんの映画を見たいなあと思うと、これらの映画を見たいと思うだろうな。監督の映画でなく、俳優の持って生まれた個性を物語にいかせる映画をとれる人だ。ん、いい映画だと思う。

 

([な]9-1)きみはいい子 (ポプラ文庫)

([な]9-1)きみはいい子 (ポプラ文庫)

 

 

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