oohama5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと思っています

登っていくこと落ちること「犬王」

 


 湯浅政明の新作アニメ「犬王」を待っていた。主演が女王蜂のアヴちゃんでバディ役が森山未来、そして、音楽は前衛な大友良英、これは見たい。

 湯浅政明のアニメは流れるような動きに特徴があり、水の動きなんかにスケールがある。最初期の東映アニメを思い出させる。私はペタッとした画風の白蛇伝の原画をかいた森康二を思い出す。

 アヴちゃんは歌声が力強い。気になっていた。今回サントラ早く聞きたいと思ってほかの曲を聞き込んだのだが、テンポも速くドラマチックだ。

 森山未來は「いだてん」で古今亭志ん生一家を演じ分ける芸達者。そして舞踊家

 大友良英は「あまちゃん」の音楽。あれ、まるでミュージカル。

 で、見に行きました。ロックのライブショーを見ているみたいだ。90分とスピーディな構成。映像に圧倒される。

 忘れ去られた能楽師である犬王を想像して描かれてたけど、当時はあんな感じではなかったかって思いました。多分、ものすごい身体能力のある人で、まねできない芸があった人だと思う。

 その話を多様な平家物語を語る盲目の障碍者であるバディの琵琶法師、友魚が話を権力に取り上げられる話が絡められている。

 そして、それは敗れた人達の記憶を残そうとする平家物語の意味を問う。そんな感じに感じた。

 犬王は身体的な欠損を抱え、それを芸の力で取り戻していく。それは名もなき人達が支える。その当時の差別された芸に生きる人のありさまだと思う。

 映像的に楽しい。たくさんの琵琶法師たち、亡霊たち、細密に再現された京の風景。ダイナミックな動き。

 そこで平家の悲劇を表現した犬王の舞台を象徴的に再現していく。舞台を尊重してるので、ちょっと湯浅監督の闊達な自然描写がしばられていたのが苦しかったかな。

 ラストもちょっとわかりずらい。しかし、芸道の、たぶん、実在の犬王が陥った罠を象徴的に語っている。だから、カタルシスが得難い映画かなって思う。

 うん、でも、じわじわとラストがわかってくる。

ラストに犬王と友魚は在りたい自分に戻って踊り歌う

inuoh-anime.com

 追記です。

 原作の「犬王の巻」読みました。声を出して読むことを重視したからか、読みやすかったです。犬王が実際演じた能楽、腕塚、鯨なんかも解説があってわかりやすかった。映画はバディの友魚と琵琶法師たちの情のやり取りがこまやかでいいなって思いました。いいなって思った方は読んでみてください。

 話がそれますが、私はアメリカとの戦争中の清水宏の映画「按摩と女」での伊豆の温泉のロケで盲目のマッサージの人が多く、ほとんどが若い青年だったのに驚きました。特に彼らが戦争で障害を得たことも暗示されているのにショックを受けたのです。

昔は失明した人が当たり前に日常にいたんだと思いました。

 今回、私は盲目の琵琶法師という存在が初めて分かったような気がします。彼らは若い男性だった。たくさんいた。それは天然痘といった病や戦争での傷での感染やケガでなった。そして、彼らの寿命は短い。彼らの中には教養のある人も多数いた。

 そういった人々が命をかけて、敗北者である平家についての話を集め語ったのが、平家物語なんだという事実が実感されました。

 面白い。