oohama5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと思っています

映画「野火」体験とは何か

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 3年ごしで、塚本晋也、監督、主演の、第二次世界大戦のフィリピン、レイテ島をえがいた映画「野火」を見てきました。残酷描写が怖くって見に行けなかったのですが、いいという評判は気になってました。

 その間、塚本晋也は、ハゲましたが、ぐっといい男になり、シン・ゴジラの舞台挨拶で黄色い声をあげられたり、スコセッシの「沈黙」ではりつけになったりしましたね。

 映画の感想ですが、まず、自然の情景が美しい。撮影も塚本晋也なんですね。そのなかで愚かな人間ドラマが展開されるわけですが。残酷描写、ハンパないです。今まで見たなかで一番ひどい。まあ、私は怖がりなんで、ホラーとか戦争映画とか、ほとんど見たことないのです。でも、びっくりするぐらいです。カンヌで賞をもらわなかったのは、メジャーでうれたり、テレビ放映も、まず、ないからなのかな。大衆に開いてない。

 でも、ロングランになっていることからわかるように、戦争を体験した兵士たちの悲劇を伝えたいという、ひりひりする思いがします。人間ってなにかということに、興味があるひとに伝える、とっても私的な映画です。DVDで、途中でやめたという感想が結構あって、映画館という空間に縛り付けられないと、見にくい映画になってます。

 で、あとで残酷さが残るかなって思ったけど、私は、ドキュメンタリーとかで擦れてたりで、大丈夫なような。あまりにやりすぎると、ホラーなフィクション感が出てくるってのもあるのかな。これって、大岡の体験なのかな。

 気になったので、少し調べてみました。大岡昇平の実体験は「俘虜記」という捕虜になった前後の体験を描いたものが、ほんもののようですね。そのころ聞いた、噂を元に書かれたようです。その体験をした人は、ほとんど生き残っていません。生きて帰っても、精神が不調になったひとが、多かったのではないかな。

 これは水木しげるの「総員、玉砕せよ!」と同じです。近い体験をもとに作られています。その後、書かれた、人々の聞き書き「レイテ戦記」、この三部作を読まないと、この映画の深いところは、わからないかもしれません。

 大岡昇平は、「俘虜記」と「野火」のあいだに、「武蔵野夫人」という、大ベストセラーを書いています。なんだか覚えてるなと思ったのは、エロ映画のなんとか夫人の元ネタなんです。そういえば、軽井沢夫人なんてのもありました。溝口健二で映画化もされています。

 日本映画チャンネルでちらっと見ましたが、いい子ぶったヒロインはじめ、困ったひとしか、出てこないです。古くもあり、途中で挫折しました。サドマゾの匂いのする嫌な話です。ヒロインが、自立感のつよい田中絹代なのもピンとこないのかもしれません。まあ、品のある文芸大作でないと、客は来ないな。脇に、若くして亡くなった、美人女優、轟夕起子。夫役は森雅之、この色々とある俳優さんたちは、今だったら芸能界にいれたのだろうか。あのころの映画界の力は感じますね。

 大岡昇平は女性関係で色々とあった人みたいです。戦前も戦後も、世をはずれたところがあるひとだったらしい。塚本晋也はこの映画で、嫌な気持ちになってほしいと願っているそうですが、戦争画面より帰還後の暗い画面が怖かった。地獄がつづいていくような感じです。人間ってなんなんだという映画だと思います。これからも長く上映されると思いますので、興味のあるひとは映画館で見てみてください。

 


nobi-movie.com

 このあと、読んでみました。それますが、晩年の「事件」、図書館になくて、いまだ、読んでません。日本文学のマイナー作品って消えつつあるのかな。生き延びるすべに知性とか教養とか役に立つのかなあって、たまに信じたくはなります。

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