oohama5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと思っています

「親なるもの 断崖」を読みました。

  北海道出身の瀧波ユカリさんが絶賛していたので、読んでみました。名作だと思います。東北から、北海道の室蘭の遊郭に売られた娘たちの人生を中心にしてた物語です。遊郭のえぐい実態があらかさまに描かれて、ちょっと辛い漫画でした。でも、それだけではなく、崖に囲まれた室蘭の雄大な自然、鉄の街である室蘭の製鉄の現場が描かれたスケール大きな話です。作者の曽根冨美子さんがあとがきで語ったように、加害者であり被害者でもある人間たちが作った街への賛歌でもあります。北海道開拓史のひとつとして、とてもいい漫画だと思います。物語は、九割は創作だと彼女は言っていますが、室蘭で学生時代をすごした彼女の時間、主人公の時間、その娘の時間が同時にあり、骨太な風景と心理的に的確な絵画的要素とネームのポエトリーな要素が融合した漫画らしい漫画です。その中で、現代の私たちが過去のいろんなひとのはぐくみで生きていることが、実感できるように思いました。個人的には、娼婦である主人公と娘を受け入れていく、夫の母のもがき苦しみながら、許していく姿に打たれました。そして、主人公を助ける、一緒に売られて芸者になった女性の、女としてのおぞましさ、美しさも印象に残りました。矛盾と破綻もある物語ですが、この作品が発掘され、この時期に再出販されたのは、意味あることだと思っています。

   

 

親なるもの 断崖 第1部 (ミッシィコミックス)

親なるもの 断崖 第1部 (ミッシィコミックス)

 

 

 

親なるもの 断崖 第2部 (ミッシィコミックス)

親なるもの 断崖 第2部 (ミッシィコミックス)