oohama5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと思っています

なんで、あんなに小説を読んでいたんだろう

 二十代は山本周五郎からはじまり、司馬遼太郎とか、池波正太郎とかをほぼ全巻よんでいた。星新一とかのSF、そしてアガサ・クリスティなんかもを読んでいた。みんな文庫であるし、図書館で借りやすかったのもある。司馬遼太郎はある世代には日本の知性みたいだけど、私は初期の「俄」とか、「国取物語」とかを覚えてる。なぜか、「龍馬が行く」は読んでない。たぶん、その後の国士的な生き方の匂いがして、やだったんだと思う。初期の小説の大阪のどうしようもないオッチャンが、自分のために書いた小説の匂いがよかった。けっこうえぐいエロもあって、その頃は、同世代の池波正太郎とライバル扱いだったのがわかるなあ。お堅い中央公論から出された「豊臣家の人々」あたりから、ジャーナリステックな資質が強まって、そういった小説は書かなくなったような。

 「豊臣家の人々」は好きだ。大阪への愛が感じられて。あの小説で秀吉を支えた、朝日姫、豊臣秀長を知った。一人の英雄の影が感じられて、いい感じだった。池波正太郎も初期の梅安ものが好きかな。本当に暗くて、特に女性への憎悪が感じられて、池波が、アウトローの世界に、かつて居たんだなってと察しられる小説だった。話がそれるが、渡辺謙主演の梅安もので、余貴美子が出てたのって、その味わいが出てて、よかったな。どちらも、まだ、小説がうまくなく、というか、司馬遼太郎は小説家としてはずっと下手だったような気がするが、このころの未完成さに、物語ること、自分のために書いた小説の良さがあると思う。もちろん、のちに書かれた本が残っていくのだとおもう。司馬遼太郎だと、「坂の上の雲」、そして、池波正太郎だと「真田太平記」「鬼平犯科帳」だと思う。山本周五郎も色々と読んだけど、結局、現代小説の「青べか物語」が一番好きだ。山本周五郎は記憶というものの、改変にすごく興味があるのだと感じられた一冊だった。民俗学の教養、昔の感情を記録しておきたいという部分に共鳴したのだろうと思う。

 これらの小説を読んでいたのは、おっさんになりたいという変な願望がだったのかなとも思う。就職に失敗し、家族に押さえつけられ、学校に軽んじられ、女としてたたきつけられていた。今思うと、まあ、社会ってそんなもんで、というか、人間ってネガティブから入る本能があり、そんなに大げさに絶望しなくてもって思うけど。そのなかで、物語世界にどっぷり浸かって、逃避してたってことだろうなと思う。

 一昨年、奈良美智の展覧会を見て感じたけど、全然違う次元の本をよんでいる教養人がたくさんいると思った。たまに、ほんと自分にがっかりする。こんな本、存在すら知らなかったよ。だから、吉本隆明も、ハンナ・アーレントも最近知った。岡崎京子なんか読んで、現実と戦っていた同世代の様子を知ると、私なんか、甘ちゃんだったなと思う。

  若くてバリバリ本を読めるとき、海音寺潮五郎の「天と地」とか読んでたな。今思うとおっさん向けのとんでも小説だと思う。変なエロもあるし、どうかなって思うけど、だからこそ、新潟の庶民がいだく、純な、多分理想化された謙信が良かったと思う。そういえば、大河ドラマの謙信、石坂浩二さんだったのではないだろうか。純だったなあ。

 今思うとあの読書はムダでもなかったなっと思う。なにかしら、私を作ったから。そして、ものがたりとは何かを本能的に探っていた気がする。おっさん研究にもなったし。

 

天と地と 上 (文春文庫)

天と地と 上 (文春文庫)

 

映画でははしょってるけど、 藤紫という悪女が活躍します。韓流ドラマのようで面白い。

 

悪人列伝 古代篇 (文春文庫)

悪人列伝 古代篇 (文春文庫)

 

  歴史の勉強になった。作者ともに勉強しているようでよかった。これで藤原薬子、初めて知ったよ。