oohama5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと思っています

村上春樹「騎士団長殺し」読みました

 

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いつもは文庫になってから、読んだりしてたんですが、今回ははやばやと第一部をよんで、急いで第二部を手にいれて読みました。エンターテイメント小説として抜群に面白い。まあ、村上春樹エッセイいわく、まんまとaddictionにかけられたのかもしれませぬ。ちなみにaddictionって、宇多田ヒカルの歌で覚えた言葉です。

 はまったのは他の訳があって、舞台が何度も行ったごく近くの場所なのですね。桜で有名な場所ですが、シーズンオフにも結構行っています。一番の思い出は、子供が小さい頃、家族で出かけて、きいちごをとったことです。谷間がせまく気候がコロコロ変わるのか、不思議なことがおこるので、心惹かれるのです。ちょっとしたパワースポットだと思います。あの場所が選ばれたのはこの話のたいせつな要素、谷間が狭いということなのだろうと思いますが。

 登場人物のメンシキという男がほぼ私と同じ年だということも、実は重要なことでした。かのオウム真理教の幹部って、私とほぼ、同世代でなのです。私も彼らと少し接点があったりします。東京、大阪では、以外とそういう人多いのではないだろうか。知り合いの知り合いとかね。もちろん、オウムのルポ「アンダーグラウンド」を書いたひとだから、気にしてしまうのです。私たちの世代というのは、かの学生運動が挫折した頃に生まれたこととか、科学がいろんなことを解決したかに見えた頃だと思っています。ちょうど私が生まれたころに、出生時の死亡率が10人にひとりにぐっと減ったとか読んだことがあります。確かに、都会では、ほぼそのことは見えなくなっていたけど、東北とか北海道の奥とかで、子供たちが死んでいたのです。意外だったのは、ハンセン氏病の特効薬がでたのも、この頃なのです。

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 若いころも、私が学校を卒業したころは、ちょっとした就職難でした。次の年ぐらいからバブルで、大企業でイケイケとなったのです。そういう意味では境目の年でした。同じ年でうまく就職した人はその恩恵をうけ、派手な生活をしていましたが、出来なかった人たちは辛かったなあ。もちろん、好景気の恩恵はそれなりに誰にもあったようです。たった一年ぐらいの差ですよ。そういう意味では絶妙な年齢設定なのです。わかっていて、村上春樹は設定しているのかな。科学は万能だと無邪気に信じられたころに生まれ、その人にもたらす、善と悪に気づかされた人生のたびゆきだったと思っています。

 その後、つらいひとを見下げ見捨てることが、本音がたいせつと、ひそやかに始まっていたことを、バブル崩壊のころに気づきました。真面目を笑い、モラルを笑うことです。そんな個人的なこれまでの思い、そういった気持ちを渦巻かせる小説でした。

 読み込んで感じたのは、思いを引き継ぐこと、そして表現することのたいせつさです。このなかで、死に行く老人と、ひきつぐだろう子供が救われます。こどもってなんだろうね。すごく気になります。舞台となった場所は、すごく女性を感じさせる場所なのです。そして、手付かずのむかしの痕跡がある地域なのです。

 小説のなかで、なにかしらの秩序がこわされたこと、そのために主人公がなさなければならない不思議とはなにか。そして、騎士団長殺しとはなにか、読んでみてほしいです。もちろん、おなじみの村上春樹の小説にでてくる、いつものアイテムも散りばめられています。

 もうひとつ感じたのは、表現することについて、励まされたことです。すべてのひとに言葉にできない体験、思いがいっぱい溢れてると思います。私自身もブログなんか書いてると、自分は聞いてほしい、知ってほしいというスケベ心の塊なんじゃないかと、戸惑ってしまうことがあります。そんなことはない、まず、自分を救いたいというきもちで表現してるんだ。それでいいのだと思いました。あふれてしまう何かを表現することは、まずは、よきことかなって感じられて、ほっとさせられる小説でもありました。

 

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騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

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