「シン・ウルトラマン」を見に行って名バイプレイヤーだった岸田森を思い出した。
岸田森の仕事で一番印象に残っているの「帰ってきたウルトラマン」を松葉づえの男を演じたときで、今回確かめてみたら主人公の育ての親役だったらしい。
なんでかなって思い返してみると父に似ていたからだ。父は戦後すぐに結核を患い肋骨をとって体が少し傾いて歩いてて一生痩せていた。たたずまいが似てたのですね。
「帰ってきたウルトラマン」の役はあてがきだったそうで、本人もこの役をいたく気に入っていたそうだ。
岸田森の印象はこの世に居心地が悪そうな感じ、そして理屈っぽい正義感をもっている感じだ。
そのあたりが映像関係者の子でシュタイナー学校に行ったりした斎藤工に似てる。岸田森は劇作家の岸田国士を叔父にもち、岸田今日子のいとこで演劇界の中の人って感じで浮世離れしてた。育ちがいい階級の異端って感じだ。
そして、思い出したのは庵野秀明の父が片足のない男だったこと。私の子供時代、まだ、戦後が見え続ける人は不思議な感じがした。今回の配役はそこらへんもあるなって感じた。思い込みかもしれないが。彼らは異星人感があった。
今回、NHKBSでやっていたドラマ「ふたりのウルトラマン」を見て、ウルトラマン自体も戦争の影が深く感じた。岸田森も含めてアルコールで早く亡くなった関係者が多いと知った。そうか、円谷プロの戦中の大ヒット作の特撮映画「マレーハワイ沖海戦」の影がなかったわけではないのだと胸をつかれた。
そんなわけで今回の「シン・ウルトラマン」は心に残る。
そして、思い出した岸田森の名演技は大河ドラマ「草燃える」の大江広元役だ。ちょっと、眉をつぶし違和感を感じさせる演技をはりきってされていた。
「草燃える」は何度も映画の主役を張った岩下志麻の貫禄で北条政子を主役に持ってきた大河ドラマの名作だったと思う。
石坂浩二のインテリな悪役感のある頼朝と端正な二枚目だと思っていた松平健の複雑な演技力も印象に残る。
その中で岸田森の演じた大江広元は貴族性がたちあがる印象的な役だった。今、画像を見ると、細いけど、舞台で鍛えた体幹の強さも感じて、武家政権の初代幹部っていう感じもする。
同じ時期に彼が印象的に演じた物語が今の時代に合わせて、「シン・ウルトラマン」「鎌倉殿の13人」としてリメイクされたのは不思議だ。
この人は名優になった樹木希林の最初の夫だったり、勝新太郎の学校、勝アカデミーで演技を教えたり、面白い存在の人だった。