oohama5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと思っています

「銀座24帖」無頼の影 川島雄三

 ヒロインの姪役の北原三枝がいいとのことと昔の都市風景が好きなんで何となく見始めたのですけど、まず、語りの森繁久彌の歌「銀座の雀」で始まる。そして、多摩川付近の田舎の銀座を名乗る遊郭そばの田園が写される。なんか違うなって思うと、川島雄三の日活映画なんですね。ひねくれてる。

 題名もなんかわからない。銀座の風俗を描いた短編小説集を脚色してるみたいです。そこで、当時問題だった覚せい剤の密売がらみの戦争の影を引きずる男女の話が始まる。銀座の夜のロケや風景も楽しめるんですけど、コメディか悲劇わからない話が盛りだくさんに展開します。

 この映画がいいなって思うのは女優陣のファッションです。特に北原三枝。日活の女優さんは森英恵をひいきにして映画に導入したと聞きましたけど、たぶん森英恵のデザインなんでしょう。今見てもかっこいい。

 このころの洋服はまだ、立体裁断がわからなかった時代なんで着物っぽくってダサい。美意識に厳しい完璧な画面が好きな小津安二郎の映画を見たりすると、違和感があります。彼も感じてたみたいで、その後、ヒロインは着物を着るようになるのはそのせいなんだろうと思います。洋画と比べるとつらいんですよ。

 男性ファッションはなあ。ドウランが濃い主役の三橋達也のTシャツもつらい。まあ、西洋も男性のカジュアルが始まったばかりだから、アラン・ドロンぐらいしか似合わん。その後の日活スター裕次郎も変だったな。日本の男性カジュアルはヨウジヤマモトぐらいにならないとしっくりしないのかもしれない。私見ですが。

 脇の小柄な大坂志郎が背広が似合って可愛い。彼は今ならジャニーズにいそうな美貌だったんですね。気さくなおじさんとしか思ってなかった。美少女だなって思ったら浅丘ルリ子でした。美男だなって思う岡田真澄も出てくる。そして、裕次郎をプロデュースした水ノ江滝子も。達者な芦田伸介佐野浅夫、コメディの演出が楽しい。

 この映画は1955年で小津安二郎成瀬巳喜男木下恵介が決定打を放った直後なんですけど、そのころに価値観ががらっと変わったんだなってのが感じられます。日活で新しい監督、新しいスターが提示されてる。映像もがらっと変わっている。

 話はそれるんですけど、私が夢中になっている漫画「ながたんと青と」がまさに1954年からの数年を描いている。戦争未亡人の30代女性が京都の料亭を守るために20歳の大学生を婿にとる。しかし、二人はその中で愛をはぐくむって話なんですけど。

 戦前までだと、家を守るためにそういう結婚はざらにあった。さすがに女性が年上は少なかったですが。しかし、このころから人々は違和感を言葉や態度で出せるようになった。家を守ることが当たり前だった日本の伝統が否定されたわけで、映画も撮りがいがあったと思うよ。

 この前の朝ドラ「カムカムエヴリバディ」もヒロインの戦争未亡人の安子が夫の弟と結婚するのを否定する話で。実際は親族の話なんかを聞いてるとそういう再婚を受け入れた人がほとんどだったんですね。主人公をいじめる女性ののちの言葉、「ぜいたくじゃ」ってことです。ほぼ、自活できないですから。伝統的な生活は支援もあるし。そこで得たものと失くしたものを、今、また、考えようという流れは確かにあるな。

 この映画のラストもヒロインは戦前の価値観でぐれた亡き夫の家族と子供を守るために伝統的な価値観を受け入れる。同じ傷を負った主人公はやさぐれて生きていく。

 ま、楽しい娯楽映画で気楽に見ないと失礼だとも思いますが。

 次に三橋達也川島雄三は東京の場末の遊郭、洲崎を舞台に男女のどうしようもない話「洲崎パラダイス赤信号」を撮ります。貧困で新しい時代に行けなかった人たちもいたわけで。その物語に行く模索をこの映画は感じるのだな。うん、悪い映画じゃないです。

 

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