大阪弁で書かれているからかサクサクと読めた。この頃は小説を読むのがおっくうだったけど、生まれた土地の言葉だからだろうか。
平成18年の大阪の若い女性の日常を描いたもの。若い時、田辺聖子さんの新作を読んでたけど、大阪のことばも風俗も変わったなあ。
主人公は会社が倒産した事務員からカフェのアルバイトの日々を過ごしている。いろんな男性と恋愛して、大阪の古い町の写真を集めている。
そこには古いものが亡くなり新しものに入れ替わっていく無常と、あのころから始まった大阪の不穏な感じが表れている。親も老い、今までの生活でない次元に行こうする、むずむずする女性の健やかさが心地よくもある。
恋愛の結末という感じの物語の終わりはない。この小説の主題はあくまでも街なんだと思う。廃屋に咲くばらが印象的にラストに描かれる。
芝原友香さんの本は、「公園に行かないか?火曜日に」が初めてだ。アメリカの大学で世界の詩人や小説家を集めて学習するプロジェクトに参加した体験を書いたものだけど、体験記って感じでもない。とても、冷静になにか広い社会性のある方だなって感じた。
あと、建築好きな方っていう印象だ。私もそういうのが好きなんでこの小説がスっと入ってきたのかもしれない。
岸正彦さんとの共著、「大阪」も読んだ。今の大阪ね。うん、いろいろと思うとこある。