oohama5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと思っています

おちょやん 昔は良かっただけではない話

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朝の連続ドラマ、「おちょやん」終わりました。最初はなんかなって思いながら、昔の大阪、道頓堀を思いながら完走しました。

そうそう、私の子供のころは道頓堀はかつて中座、角座がある芝居町でした。歌舞伎が時々興行され、上品な和服の女性がそぞろ歩きしてました。その中でスターである藤山寛美を中心とした松竹新喜劇が常打ちされていました。親に連れられて何回か見ましたが、うきうきするいい思い出でした。

 今回、あの威厳のある座長、渋谷天外とオロナミン軟膏の琺瑯立て看板の女性が夫婦だったとは初めて知りました。浪花千恵子さん、周りの大人は尊敬をもって語ってました。

 そんな彼女の人生を初めて知りました。戦前とはいえ、かなり過酷な人生ですね。

 貧しいなか、母を失いひどい家族に迷惑をかけられ、結婚するも子供ができず、夫が浮気で外に子供を作ったのをきっかけで松竹新喜劇を追い出された女性だったみたいですね。

 その後、「お父さんはお人好し」というラジオドラマの母役でブレイクし、映画の黄金期を支える名女優になる。サクセスストーリーなんですけど、朝なのでユーモアと美化を交えて、見ててつらいなって思いました。SNSでドラマ好きの方がいっていたんだけど、グロテスクな話なんですね。そうだ、それが見ててつらかったんだ。

 それが幼い主人公を道頓堀のお茶子という児童労働に追いやった義母が生きていて、主人公を応援していて、一番つらいとき助けるという話に転換したとき、美しい話になったんですね。そして、ラジオドラマに誘った塚地武雅が演じる花菱アチャコの明朗な明るさが良かった。長いドラマを見る醍醐味だと思いました。過去の今と違うモラルの中にいる人をどう扱うか、すごく勉強になりました。

 ドラマの中で渋谷天外が書いた「桂春団治」を演じられていて懐かしかったです。確か、寛美が演じたのを見せてもらったのかな。

 今見ると、桂春団治のお芝居は妻の献身が強調され時代遅れだなって思います。

でも、いわゆるその後何度もドラマ化、そして都はるみの「浪花恋しぐれ」の元になったお芝居なのですね。

 春団治の臨終、花道を幽霊になった春団治が人力車で去っていく演出、新喜劇の元は歌舞伎の伝統なんだって感激するシーンが再現されていました。セリフの細かいギャグまで覚えてました。今、再演してほしいとは思いませんが、名舞台だったなって思います。

 見たとき、春団治に関しては一緒に行った父の、何が良いかわからなかったが大人気だったとの感想がありました。のちに、春団治が子供に不人気だったことを読みました。彼の魅力はセクシャルで魅力的であること、話が男女の機微に通じている大人の芸だったとのことでした。

 その当時の一見不合理なこと、その中の実感っていうのは理解できない。浪花千恵子さんの当時のインタビューを見ると彼女の夫婦関係は性依存の男性と共依存なんですね。別れた後、ドラマでは和解しますが、ほぼ無縁の人生を送ったようです。

 男の方も被害者意識があったと思いますね。それよりも、彼女はそれを良しとした劇団や道頓堀の人々に対する恨みは深かったと思います。

 そういうものを内在しているがゆえに映画の中の彼女は輝いている。「小早川家の秋」のなかの無惨な愛人親子のありさま、競輪のシーンもいいですよね。「宮本武蔵」の分別のないおばあさん、そして明るさを強調した「彼岸花」の訳知りな感じ。確か、昔の名喜劇役者を演じた板尾創路がインタビューで語っていたけど、昔の芸人さんは目が怖かったって実感ですね。とんでもない修羅場を経験されている方が多かった。そのなかで突き抜けた魅力が彼女にあったと思います。

 それが青春期だった映画界で女優として出発し、彼らが成長した映画界に戻れたことが大きいなって思います。

 私が子供のころにもてはやされた人、価値観は美しいものがあっても、全部は受け入れられない。それをどう扱うか、それを描いた面白いドラマだったと思います。