oohama5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと思っています

過去と今

 

 

その女、ジルバ(1) (ビッグコミックス)
 

 

 テレビドラマ「その女ジルバ」を見て、原作を読んでみる。読んでみると、絵に情報が多くて、こりゃ、マンガとしか成立しない構成じゃわいと、ここんとこ、コツコツと読んでいた。2019年の手塚治虫文化賞をとった時から気になっていたけど。ドラマ化がきっかけとは、無精な私らしい。というか、いつものことです。

 ちなみに、次の年は高浜寛の「ニュクスの角灯」。谷口ジローが帯を書いた「蝶のみちゆき」で初めて読んだ。幕末の長崎の丸山遊郭が舞台だ。受賞作も明治の長崎。この人の長崎弁を駆使したローカルな感じが好き。長崎県、天草在住らしい。

 この人はリニューアルされたリイド社の編集さんに発掘されたらしい。メジャーで売れたのは最近な感じだ。フランスでキャリアが始まった人だそうだ。リイド社って、時代劇専門のおっさん雑誌って感じだけど。あなどれない。やはり、看板を張る人は個性があって、どこも大したもんだ。

 賞を取ることは、概ねいいことだと思う。客観化っていうのだろうか。とっつきにっくくても、漫画読みでない人にも届く。だから、ドラマ化されたりして、多くの人に届く。

 

 で、「その女ジルバ」は40代の主人公が拾われたお年寄りたちが経営するバーを舞台に、彼女が今の世の中で苦闘する話とお年寄りたちの戦中戦後の話をマンガにしたものだ。現代的な問題もするどくて、戦中、戦後の話もてんこもりで、スゲー取材をしたのだなって思う。情報が何しろ多すぎるし、タブーになっている話も多い。整理できてないことも多いけど、ともかく、聞いた話を表現したいという強い意志を感じるマンガだった。作者の有馬しのぶさんは四コマギャグ作家さんだったらしい。絵柄は可愛いけど、物語を作る才能は素晴らしいなって思う。

 

 ネタばれになるけど、その中でもバーを作った、帰ってきたブラジル移民のジルバさんが被害を被った、ブラジル日系人の「勝ち組」のはなしが面白い。

 今のトランプ支持者の話に似てるんですよ。日本はアメリカに負けなかった。そして、天皇陛下が差別と貧困に落ちた移民を船を出して助けてくれる。それで勝ち組と負け組との間で殺人まで起こる。

貧して窮した人たちの狂気とそれを食い物にする人たち、今日的な問題だと思う。

 

 そういった戦争に至った日本の国家の無責任と今の都会に上京してきた女性の問題とリンクする直観がいい感じだ。作者は福島の会津あたりの人。震災のころから連載されていて、福島の話も出てくる。この辺りのローカルな感じも今ですな。

 

 結構、表で取り上げることができない話が多い。今ドラマ化されるのって配信が当たり前になったからだろうな。長期のコンテンツで採算が取れなくもない。深夜であれば選んだ人が見てるしね。

 少ない予算のなかでよく頑張っていると思う。大好きな女優さんの池脇千鶴が主演だし見てる。「万引き家族」で安藤サクラ演じる母を追い詰める警察関係の人は彼女だった。あの名演を引き出して大したもんだと思う。