oohama5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと思っています

心のふれあいに年齢はない

 

人生論 あなたは酢ダコが好きか嫌いか ~女二人の手紙のやりとり~

 コロナ下の美容院で美容師さんに髪の手入れをしてもらってた。美容師さんは、このご時世に髪の手入れと通勤をする恐怖を語り、それをうんうんと聞く。そのとき、手元にあった女性セブンにあったのが、佐藤愛子さんのエッセイ。不定期なのか。戦争中に上半身裸で体操をしたことを、同じ女学校の人と語り合ってエッセイにした体験をふくらませたもの。最後に、大変な時は声の大きい馬鹿の言い分が通るとあり、思わず、くすっと笑ってしまった。

 お元気でなによりの切れ味。そうか、今と一緒だな。ちまたにデマが流れ、どさくさにみだらなことを通すものおり、えばりちらしたり、幼稚ないじわるするものあり。誰かがコロナで脳の判断がぐちゃぐちゃと言っていたが、危機に人間とはそうなるものかと、しみじみ感じた。面白うてやがて悲しきタコおどり。

 で、東日本大震災の時のラジオでお世話になった小島慶子さんとのお手紙のやり取りが本になるとのこと、早速に手に取った。

 まず、小島慶子さんご夫婦のわだかまりについてのご相談があり、それにこたえる形で始まっていく。小島さんまじめだな、そしてよく考えられているなって思った。

 しかし、私は50で仕事をやめたご主人、ごく真っ当と思う。テレビディレクターという激務、40代で始まった子育てという激務、この条件で何かをやめない人の方が変になる。奥さんの稼ぎを当てにしてッていうのは腹立つけど。もちろん、彼女も分かっておられる。しかしですね。赤ちゃんを抱えたときの夫の仕打ち、そして、髪結いの亭主を地に行く振る舞い。そこにある男たるものがという古い思いが持ち上がっていく。そこをやんわり、佐藤愛子さんがほぐしていくのですな。

 そして、酢だこが好きか嫌いか問題にいたる。作ってもらっても、嫌いなものは嫌いだし、それをはっきり言うのもわずらわしい。でも、そのままだと心が歪になる。これは永遠なる課題かもしんない。大げさ過ぎますが。今の、特に世間を渡る方便としては合わせて黙っている方が得とされる。それに麻痺している人も多い。でも、好き嫌いはどうしても出るのである。そのことをやんわりと受け止めて、人はいろいろだからと。黙ってていい場合も、きちんと言っていい場合もあるから、厄介だけど。

 そこまで語り合える深さになると人は年齢とか関係なくなると感じた。お互いもっている価値観、時代性、もろもろのことから離れて共感があるかもしれない。5歳の子供とも90歳の人とも同じ視点に立てるのかもしれない。もちろん、おふたりが人生の荒波を渡る勇者であることは間違いないけど、私もこんな風にいろんな方と、同じ一瞬の視点をもてる、そんな希望を感じる本でありました。