oohama5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと思っています

「アンダーグラウンド」を再び読む

 

 

アンダーグラウンド (講談社文庫)

アンダーグラウンド (講談社文庫)

 

 

村上春樹すげえなあと思ったのは、「ねじ巻き鳥クロニクル」、「アンダーグラウンド」、翻訳「心臓を貫かれて」が書かれたころだ。読んで後悔もした。毒が強すぎる、ちょうど、赤ん坊を育ててるころだったから。

 今回、本を手に取ってみると、手ずれがひどく何度も読んだ跡がある。なぜなら、夫の親族のところにいったとき、修行の話とともに、麻原彰晃のポスターが堂々と飾られていたからだ。夫と両親はけげんな顔をしていた。そのとき感じたのは、この人たちはテレビも見ない、ワイドショーとかの下世話なはなしも必要なんだなというしょうもない感想だ。先日、映画をふたりでみにって、私たち夫婦頑張ったんだなと思った。

 そんな私もテレビでオウムの人たちがおもちゃになっている姿をみて、吐き気がして避けてしまってた。エッセイストの中野翠さんもそうだと後に読んで、そういう反応の人もいたのかと思った。それはそれで問題もあると今は思う。地下鉄サリン後、親族は某新興宗教に入信することで、教団をのがれた。それもすさまじい話だと思った。

 

 そんなことから、自分の身近に起こったことを、どう感じていいかわからなかったから、この本はささった。そして、その渦中に踏み込んだ村上春樹が、深くきざまれた。

 この八月、再読してみた。淡々と語られる話、こんなにもひどい話だったのか。特に井上嘉浩の同級生のインタビューは見方が変わった。高校時代、彼がバスで井上にあって少し話をしたとき、暗い、合わないって、すぐ避けたって語っているのが気になった。以前も引っかかっていた。もちろん、自分には危険な人物ということだと思うけれど、彼はすぐ東京に転校したんで、井上が高校でヨガなんかに凝っているのを聞き伝えたようだ。

 彼は能力があってチャラくて、おおらかな青年だなあと。しかし、彼が妻の親の会社に転職したのは、どこか、深く傷ついていたのだと、その後の人生はどうだったかと気になった。違う人とどう付き合うかってことを色々と考えさせられた。そのあたりもオウムのはなしのキモかなっと。

 あと、改めて印象に残ったのは、妊娠中に夫を亡くした女性のはなしと障碍者になった妹と彼女を支える兄一家のはなしだ。淡々と筆記されているが、村上春樹の感情がずしんと響く。被害にあわれたひとは沈黙している。自分の今までの人生をどう感じていたかもわからない。かろうじて生きている女性には、目に光が宿ってはいるらしいが。失われたものはわからないというむなしさを感じた。デビュー作「風の歌を聴け」で病院にいる不幸な女性のエピソードがラジオから聞こえてくる。言葉にならないことへのアクセス。

 95年は、私はいろいろとあった。多くの人がなにかしら関係があったのかもしれないが、ほとんどの人が沈黙を守っているのではないかな。その、なにかしらの間接性に深く切り込んでくれたのが村上春樹だと思っている。

 この記事を書いて公開するのに時間がかかった。もう九月だ。でも、あえて私の整理としてとどめたい。