oohama5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと思っています

瀬戸内寂聴「奇縁曼荼羅」を読む

 佐藤愛子さんと瀬戸内寂聴さんの対談を読んで、はじめて、寂聴さんの本読んでみた。「奇縁曼荼羅」。横尾忠則さんの人物の挿絵が気になって、読みたいなと思っていたのだ。文壇の仲間を中心にいろいろな人との関わりを記したもの。全4巻あるが、彼女と男女の関係があった作家との話で終わる二巻までが、彼女と濃厚な縁があった人との話で、あとはちょこっと関わったひとの話だった。

 二巻の最後の順番は文学上の師匠、井上光晴、そして、誘惑しようと会いに行った島尾敏雄、そして、無名の作家だった不倫相手なんだから、恐れ入る。まだ、売れなかった寂聴さんが雑誌の仕事で行った奄美で、文学館かなんかの案内をしてる島尾にそっと寄りそって、元軍人のたくましい体の匂いをかぐなんて、リアルだなあ。作品を見て、ひっかけてやろうと思ってたんですね。今、あのひとの非常識が、ときどき、話題になるが、そういう人なんだと思う。草間彌生なんかと同じ枠ですね。かわいいともいえるけど、怖い人だと思う。

 作家になると業が増すのね。文学を志すとはどういうことか、どんなひとが名をなしたか。かつてあった、文壇というものがどういうものか、志すひとがいかに多くて、売れたひとは、その中の選りすぐりだったのかが見えて、興味深かった。同人誌で仲間を集め、切磋琢磨しているのって、今のまんが界みたいだ。そういった、文化の中心が小説だった時代の良き思い出ばなしともいえる。

 

奇縁まんだら 4巻セット

 挿し絵がいい。この肖像画たちにはげまされて書かれた評伝だとおもう。

それでもこの世は悪くなかった (文春新書)

こちらも、文学者の家に生まれ、戦争にもまれ、生き抜いたひとのすごさ。