oohama5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと思っています

絵巻ねずみの草子を見に行ってきました。

 

近藤ようこの漫画に、中世の御伽草子を漫画化したものがいくつかある。その中のかわいいねずみが、「お嫁さんがほしい」とつぶやくことからはじまる、ねずみの草子に、わっと、涙したのだった。調べてみると、原作がサントリー美術館にあるという。で、この夏、展示があると知ったので、見に行ってみました。

 裕福で、教養のある年老いたねずみ、権の頭が、清水寺信仰のお加護で、美女と結婚をはたすが、さて、という話です。かなりの数のねずみたちの、楽しいおしゃべりで話が進んでいきます。みんな、しゃれた名前がついてるのが可笑しい。近藤ようこの漫画では、ねずみのいじらしさと、彼を残酷に捨てる姫の冷たさに涙したが、原作は、下世話でもあるのだなあ。 差別される身分のひとの話をパロディにしたと、漫画からもわかったが、原作は、より、マンガチックだ。

 姫君の入浴シーンあり、ごはんを炊く、ねずみのまつことまつえの、ご主人とのエッチの暴露もある。姫の花嫁行列のお付きは春日の局、結婚式のお茶会は利休ねずみなんてのもある。そういえば、日本画の絵の具で利休ねずみってありますね。

 それだけだったら、かわいいだけの話だが、主人公が清水にお礼まいりしている間に、姫君に、彼らがねずみであることがばれてしまう。そのときのねずみたちの絵がリアルなんですね。凶暴なんです。身分のちがいというものが残酷に描かれている。この画面で、見ている人は現実世界に引き戻されてしまう。

 姫に罠で殺されそうになっても、権の頭は逃げた姫のかたみの品をいちいち前に、和歌を読む。かわいい櫛やら、火桶やら。でも、世をはかなんで、出家を決意したねずみは、かわいそうなだけではない。坊主になっても、お魚が食べたい、月に4回はエッチがしたいって、じたばたするのはなさけない。これって、ふるびたおじさんのパロディなんですね。そんな話を、いじらしさを、かわいいに純化する、日本の文化って面白いと、しみじみ感じます。

 元々、昔から類似のはなしがあって、量産品としてたくさんある絵巻らしいですが、これが原作のひとつなんだろうか。一度、きちんと研究書を読んでみたいです。ねずみの屋敷が京都四条堀川、姫君の屋敷が五条油小路って、えらく具体的です。当時のひとだと、どんな場所だか、すぐわかりますね。今は、偶然ですが、京都漫画ミュージアムが近くにあるのかな。

 かわいいねずみたちに心がほっこりします。夏休みの子供向けに、ややこしいところは、端折って展示されているのは、けしからんですが、日本のかわいいの文化を楽しむのは、涼しい東京ミッドタウンは、なかなかいいです。おいしそうな食べ物もたくさんあったし。いい、ねずみ供養になりそうです。

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 展示で紹介されてないところは、販売されている、こちらの絵本で見れます。装丁も利休鼠で綺麗です。監修者の、失恋ってつらいですよねという、解説もいいです。

 

www.suntory.co.jp

 

 

 

 

猫の草子 (ビームコミックス)