oohama5656's blog

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「ダウントン・アビー」ただのお気楽貴族ドラマってわけじゃない

 

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ダウントン・アビー、最初、そんなに乗れなかったのですね。でも、シリーズが進むにつれて、そして、最終シーズンにうつるにつれて、テーマがはっきりしてきて、娯楽だけど深いなって、楽しみになりました。このドラマは第一次世界大戦前後のイギリスの貴族のお館を舞台にしてるんですけど、貴族が没落していき、使用人たちが中産階級に成り上がろうとするダイナミックな歴史が描かれていて、楽しいです。

 そのなかで、女性の衣装はロングドレスから膝丈になり、馬車はすたれ、最終シーズンでは自動車レースが大流行りです。領民たちも、ご領主さまに頭をさげるだけだったのが、少し前の回では、お館の見学会に行って、歴史や美術品について質問ができるようになっています。教育を受けた新しい世代は、彼らにものおじしない。

 話がそれますが、それより少し古い時代のトーマス・ハーディの「テス」で、むりやり、成金の愛人にされた主人公が、その境遇をなげきます。それは彼女が教育で自尊心を身につけていたからだとを書かれていて、ちょっと、ゾーッとします。教育を受けていない家族や周りのひとはそのことを歓迎する。もちろん、その不幸は感じるですが。それが彼女を追い詰めていく。しかし、冒頭、教育をうけた運命の青年は、お祭りで、彼女と出会っても、頭でっかちで、彼女とめぐりあえない。ふたりはのちに愛し合うのですが。産業革命はひとをどう変えたか。宝石のやうな小説なので読んでみてください。映像が目に浮かぶのです。

 さて、ダウントンアビーでは、教育をうけた召使たちは自分の視点をもち、雇い主たちの愚かさも笑えるようになっている。しかし、諸刃の剣で、自分の不甲斐なさを嘆くようにもなっている。そんな個性をもった運転手とお屋敷の末娘との悲劇的な恋が最初に出てきます。このあたりはありふれているんですが、その理由を何年もかけて、ふかく掘り下げていったのが、このドラマなんだなあと思います。

 ストーリーは橋田ドラマみたいなんですが、しっかりとした歴史の視点があり、それに応じて、素敵なドレスやら、クラシックカーの数々、そして、華麗なお館の細部が描かれています。そして、今のイギリス社会の私たちのおじいさんたちのころの苦闘をしっかり描いているので、古くないです。次回は影の主役である、いじわる召使のトーマスの悲喜劇が描かれるようです。彼はその古い世界でしか生きれない存在なんです。なんか、年末じゃないけど、押し詰まってきました。

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