oohama5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと、書いています。

私と恋愛

 村上春樹の「TVピープル」を読んで、私と恋愛についてつらつら考えた。私はそういえば、恋愛自体を拒絶していた。恋愛したら、ストーカーになるんじゃないかと。恋愛の結果が結婚でないと我慢できない自分がいたからだ。それぐらい、若い時は前時代のモラルにしばられていた。まわりは恋愛を楽しんでいたのにだ、そんな私はもてない劣等感をかんじた。読んでいて恋愛に限らず、するべきときにしない、するべきことを我慢する、それがどんなに自分をそこねたか、それが彼の小説をよむ理由なんだなと感じた。そういったひとは多いのだ。

 

 この短編集は、「ノルウェイの森」と「ねじまき鳥クロニクル」をつなぐものだと思った。作品としては表題の「TVピープル」と「眠り」が素晴らしい。でも、はっきりと彼が「ノルウェイの森」を書いたかわかるのは、不器用な「われらの時代のフォークロアー高度資本主義前史」だ。それは若い男女の恋愛のみちゆきを描いたもので、性的に結ばれることを拒ばんだことの悲劇だ。そういえば、彼ぐらいの世代の大学なんか行ってたひとで、こういうひとは、結構多かっただろうなと思う。今は、お互いに独身で、好意がある男女は半年もしたら、いたしてしまうというのが自然だろうなと思う。まあ、大概のひとはそうなるだろう。それを寸止めにするのは、前の時代のモラルだ。だが、それは若年の妊娠をさけるためとか、女性が18ぐらいまでに結婚をしていた時代のものだ。

 前時代が何千年かかってつちかった、矛盾がある経験則をのりこえること、それには、彼らは子供として、もっと知識や経験をつむことが必要だ、動物的な繁殖なんぞとんでもないという時代が、はじまったころのはなしだ。だいたい、作中の女性は、有力者の奥さんでしかない。子供もいない。そこにあるのは退廃だけだ。不自然なことをして、大学に行っても、充足は得られていない。今でも、日本では、社会で成功してる女性は独身であることを強いられる。「ノルウェイの森」は、そんなどこの近代社会でも起こった、社会の勝ち組になるには、動物的な充足から目をそらせというメッセージとの戦いの痛みだったんだろうなと思う。そのなかで動物的充足をもとめたのが学生運動で、それは勝ちたい人に利用されただけだったんじゃないか。村上春樹はそれらが見えて、そこを踏み外したひとなんじゃろと思う。で、ジャズバーなんかを経営していた。

 そんな彼が近代戦争という社会のシステムと個人の問題に行き着いていったのはわかる。そうなのだ、ソルジャー、戦士というものは、繁殖を拒絶しているものですね。人間の方がアリのシステムを利用している。

 

 そういえば、見合い結婚して、5年間ほど、子供ができなかったときに再会した彼らは、ひどくかっこ悪かった。あるひとが妹がこどもに預けてスキーに行ったのが憎いっていっていて、白けたのを覚えてる。私は結婚を維持するために、男女のことにキリキリと向き合っていたからだ。その充足感があった。

 

 今になったら、彼女の優越感、そして、恋愛の喜びのはての子育てのむなしさはわかる。しかし、それはよき結婚の新しい手段でしかなかったのだな。まあ、大概、それでいいのだと思う。でも、どこかで人間は肉体に裏切られる。今、でき婚が多いのも、不倫が多いのも、恋愛と結婚がいびつな形だからだと思う。でき婚は恋愛を結婚に結びつけようとする無理さを感じるひとが多い。心が離れているのに、こどもをダシにしているのだ。不倫はこどもを産むべきときに結婚できないからだ。それは、大きく言えば、システムの恩恵をうけるための犠牲なんだろうなっと思う。なんか、こう書くと嫌なモラリストみたいだなあ。ようはいらん傷はいらないということです。たぶん結婚なんかは、いたしたいとか、もう少し大きいお家に住みたいとか、理由が単純だったほうが健康ですよってぐらいでいいと思う。

 「ノルウェイの森」の直子側から書かれている、「眠り」は傑作です。主人公は平凡な生活を送っているが、魂は死んでいた。モチーフは「アンナ・カレーニナ」なので、愛読者としてはとても嬉しかった。思えば、肉体的に強者だけど、死すべき立場の戦士が、それをあやつる官僚の妻を奪う話ですね。しかし、新しい関係のなかで子供はできない。生々しいぞ。ロシアの小説は、近代社会と個人の問題に迫った近代文学のキモだと思っている。まあ、ドストエスキーを読んでないシロウトがいうことではないけど。人と社会のことは、たっぷりとした自然があるロシアでこそ、考えられたのだと思う。

 

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TVピープル (文春文庫)

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