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oohaman5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと、書いています。

谷口ジローに再会する「遥かなる町へ」

 谷口ジローさん、亡くなりましたね。ほとんど読んだことないし、なにかお悔やみめいたものを書くのもおこがましい。この前、永六輔さんが亡くなったときも思いました。彼の書いた市井のひとの生き様を聞き書きした一冊は、たしかに私の人生のたいせつなものになっています。しかし、故人をよく知っているわけでもない。だいたい、ライフワークのラジオ聞いてたわけでもない。谷口ジローも、なんども読んだ「冒険手帳」という本に、彼がアシスタントとして参加していて、さし絵の石川球太さんがその才能をたたえていて覚えてるだけです。しかし、火のおこし方を実践してみたりした、私にとっては大切な本なんです。そういえば、この前読んだ諸星大二郎の「西遊妖猿伝 大唐編」におしっこを漉して飲む方法が載っていたんですけど、彼も読んだんでしょうか。まあ、よく知られた方法のようだからね。そういえば、ジャンプの連載なんかもっていた時期、彼の本当のよさがわからなかった。いつか改めて感想を書きたいです。

 谷口ジロー、この頃ぽつぽつ読んでますが、Kindleとかネット書店のおかげです。今更かよって思うでしょうが、たぶん、今なんです。ひとつには彼の本が高かったこと、ほとんどの本屋で見かけなかったからです。もうひとつは私が年をとって、まあ、贅沢していいかって思えるようになったからです。残りが見えてきたからですね。

 谷口ジローというひとが活躍しているのを知ったのは関川夏央とくんだ「坊ちゃんの時代」の評判を聞いたからです。その後、通販生活を購読していて、「散歩もの」を読んでました。面白かった。もっと続きがよみたい、そう思ってました。

 そういった流れで、改めて、今回、谷口ジローの代表作の「遥かなる町へ」を読んでみました。ある男が故郷である鳥取県倉吉市に行って、中学生時代の自分にタイムスリップするはなしです。倉吉、この前、地震で被害があった町ですね。今回の死去に強く関わっているような気がして、興味がわきました。

 谷口ジロー鳥取市の出身なので、ほぼ主人公は分身のような感じで描かれています。すこし、ネタバレになるのですが、主人公は、かつての憧れの女性とつきあってみたり、失踪した父親を止めようとしたりします。しかし、それでも父親の失踪のなぞの多くはわからないし、母親のそのときの気持ちのなぞもわからない。初恋の女性とのその後も描かれていない。だいたい、この記憶が改めて彼が生き直したことなのか、忘れていただけのかも曖昧なのです。そして、この話が、最後には主人公の記憶であるかさえ曖昧になります。この漫画の魅力は、謎が謎なままであることであるように感じました。

 ドラマになった孤独のグルメでも感じたのですが、説明が少なく想像の余地があるのです。それは彼の漫画が絵画的だということと、関係あるんじゃと思います。絵画はみっちりと情報が入っていますが説明がない、それゆえに謎を取り込むことができます。たとえば、有名なフランスの「貴婦人と一角獣」のタペストリーを見てるような、大げさかもしれませんが。この本をみて、万華鏡のように解釈できる、そういったものを、風景をえがくことをとおして、目指していたのではないでしょうか。

 倉吉を舞台にした作品がまだあるようです。まだまだ、謎を知りたいのです。それにしても、ひとが亡くなると、「よみびと、知らず」ということばがよみがえってきます。そのひとがどんなひとか関係なく、思いは残っていくのでしょう。

 

 

 

冒険手帳―火のおこし方から、イカダの組み方まで (知恵の森文庫)

冒険手帳―火のおこし方から、イカダの組み方まで (知恵の森文庫)

 

 


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