oohama5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと思っています

静かなでゆたかなほの暗さ 能町みね子

 私にとって、能町みね子タモリ周辺にいるちょっと不思議な人ぐらいの感じだった。オールナイトニッポンでラジオをやっているのは知っていたけど、夜更かしは苦手なので聞いたことがなかった。いいなっと思ったのはWEBのかたすみにあった「お家賃なんですけど」からだ。彼女が古ぼけた風呂なしのアパートに住んだ体験を小説としてまとめた本だ。しごとをやめたころに住んだ思い出の場所だった。性転換の途中、銭湯にかようのがだめで一度出たらしいが、大家の加寿子さんなるひとは、女性になったあとも、再び、こころよく間借りを許してくれたらしい。東京の都会の懐ぶかさを感じさせるはなしである。

お家賃ですけど (文春文庫)

 そんな、実は過酷な体験をまじえながら、アパートでの暮らしを淡々とえがいていく。とても詩的で、あきらめがたちこめる文章で、唸ってしまった。今、よみおわった、北国への想いを綴った「逃北」によると忘れ去られた詩人、尾形亀之助の文章に影響をうけているそうです。尾形は宮沢賢治の「オッペルと象」を載せた「月曜」という冊子をだしてたらしい。そういった詩を感じさせる文章は好みなのだ。他の旅行記でもそうだけど、私と行っているところが、けっこう重なっているのも、なんか嬉しくて読んでいる。知らない住宅地あるくのって好きなんだな。普通のカッコしてると、普通に道を聞かれるのが楽しい。じつは寄る辺ない気分を秘めてるひとって結構いて、そういうひとに、この人の文章は受けてるのであろう。そのあと、「オカマだけどOLやっています」を読んだ。そういえば、そのころ、オカマのひともふつうの会社に勤められるらしいとうっすらと聞いたことがあったなあ。世の中も進んだなあとか、じつは結構そういうひといるのかなって思った。その体験を、この本は、いかにして自分を肯定して、そして戦かったかを描いていて読み応えあります。なんというか、静かなで湿っとした文章で、好きであります。