oohama5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと思っています

向田邦子で思い出したこと

 向田邦子で思い出したので書いてみようと思う。私のなかでテレビが始まったころの三大シナリオライター山田太一向田邦子倉本聰であります。

  向田邦子はHNKでやった、「阿修羅のごとく」が好きだった。主題歌のトルコの曲よかったですね。同じ枠の「あ・うん」も名作だ。「寺内貫太郎一家」なんかのコメディも見てたけど、あんまり中身は覚えていない。ドタバタだったからかな。樹木希林のジュリーが面白かった。「あ・うん」は男へのかすかな嫌悪があって少し怖かったなあ。「阿修羅のごとく」のいしだあゆみのすさんだメガネ女ぶりも気持ちが悪かった。向田邦子の本は、田舎の祖母の本棚でよんだ。彼女の繊細なところに複雑なきぶんになった。祖母の娘たちは、母を含め、みんな本嫌いだ。祖父がインテリぶってって、本を読む祖母が嫌いだったためらしい。その祖母の愛読書が向田邦子か、夏の暑い中、中学生のわたしは読みながら、なんだか祖母に悪いことをしているように思った。ちなみに20人ぐらいる孫たちの中で読書家は私ともうひとりだけらしい。本にはまるひとは昔から10人にひとりぐらいらしいので、数はあってるな。

 

父の詫び状 <新装版> (文春文庫)

父の詫び状 <新装版> (文春文庫)

 

 

 主には、私は山田太一が一番好きで、大抵ドラマ見てるし、本も何冊か読んでいる。そのなかでも、いくつかの悲しい話をまとめた「生きる悲しみ」が印象に残っている。最近、自分を励ます本として紹介している人がいて、ひそかに読み続けられているのだなとうれしかった。文庫で読んだとき、この本の初版がバブルのころにまとめられているのに驚いた。まだまだ、イケイケだった時代だ。そんなかで、実は切り捨てられていて、酷い目にあっているひとがたくさんいたと思い知らされる体験があって、なかなか気持ちの整理がつかなかったのが、この本で、すとんとわかった気がした。なかにまとめられている、柳田國男のはなしなんか、つらくてたまらなかった。私はドラマでは、岩下志麻河原崎長一郎山崎努が出た「早春スケッチブック」がいちばん好きだ。特に河原崎長一郎が映画では結構ダークな役柄をしていて、実は無頼なところを知ってる人で、必死に普通を演じた人と知って、今、よけい好きかもしれない。

 

生きるかなしみ (ちくま文庫)

生きるかなしみ (ちくま文庫)

 

 

  そういえば、日本は優秀な女性ライターが多いなあ。アメリカはたまにいると、ものすごく話題になっていて、けっこう、いじめもあるみたいで、なんだかなと思う。幼くて、内容はほとんど覚えてないけど、水木洋子という名前を覚えている。母が持っていた雑誌付録の手紙文の見本も書いていたので、心に残っていたのだろう。離婚のときとか、デートでとちゅうで帰ったときとか、昔はこんなときでも手紙を書くんだとこっそり楽しんでいた。結婚したときも持ってきたはずだ。あとで、成瀬巳喜男の映画をみて、シナリオを書いてたと知ってすごいなと思った。市川崑の奥さんで彼とコンビをくんだ和田夏十も忘れがたい。あと、大河を二本書いた大野靖子もおぼえてる。職人的に書いた無難な作風だけど、確実って、いいことではないだろうか。あとは演出と役者さんの腕でなんとかなるような。

 だいたい、時代劇って資料を深く読みこなし、ある程度専業でなければ、いいものは書けないのではないだろうか。役者もしかりで、今の真田丸が楽しみなのは舞台でたたきあげた役者さんがみれるからだ。経験とか言うと殴られそうで怖いけど、時代劇に関しては、経験とか地道な資料の読み込みとか、時間が大切だと思う。

 だから、大河は売れっ子だった山田太一倉本聰も書いているけど、いまいちなのはそのためだと思っている。えらそうですかね。ん、これくらい言ってもいいと思う。

 昔の売れっ子で傑作を書いたのは、「黄金の日々」を書いた市川森一ぐらいではないだろうか。創作と歴史の両立はむずかしいです。地味でわかりにくかったけど、三田佳子が主演した「花の乱」も好きだったな。能狂言の感じを出したかったのだと思う。松たか子市川海老蔵が、若き日の足利義政夫妻を演じていて、美しゅうございました。

 職人的っていえば、北野武の自伝をたくみに脚色した「たけしくん、ハイ」と「天までとどけ」の布施博一も軽みがあって好きだった。目が悪くなったからって、あっさりと引退したのもその人らしい。

 

 最後に倉本聰について、ちょこっと書いてみようと思う。倉本聰は再放送とか見ると、見入ってしまうけど、熱心にはみれなかった。「前略、おふくろさま」、「北の国から」傑作だと思うよ。 なんでかなと思ったけど、町山智浩が映画『時計 Adieu l'Hiver』をとったとき、映画のために、子役だった中嶋朋子にフィギュア・スケーターになることを強要したと知って、意味がわかった。私にとっては嫌いなタイプの男の人だ。そういえば、糸井重里が、「北の国から」は大自然のなかで人々の営みを描いてように見えるけど、恋愛のふきすさぶ感情の嵐を描いたものだと言ってるのも面白かったな。きらいって面白い。そこに何かしら、自分があるからだ。しっかり全部見てからという意見もあろうが、見ないと思う。もちろん、山田太一向田邦子も変なところがあるわけで、それが許せるか許せないかが、好き嫌いに関係しているのかもしれない。

 昔のライターさんは食べれない仕事なのか、すごい数書いているなと思う。大家になるって、数をこなして自分を掘りきることと思う。そのなかではとんでもない失敗作もあるわけで、しかし、だからこそ開ける世界もあるなと思う。