oohama5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと思っています

最近読んだ本6 読みたいものはたくさんある

 このところ小説を読んでる。ジョディ・デンチ主演のドラマ「クランフォード」で気になっていたギャスケル夫人の短編集。オースティンのすぐあとのひとだけど、貧しいひとと接していた牧師さんの奥さんなので、ひとを救えない絶望感からか、宗教観が堅苦しい。しかし、みじかに産業革命のときの貧しい人々と接したひとなので、その心理描写はリアルだ。いろんなテイストの小説があるけど、教育がないことの暗黒で荒んだ生活をしていた男が、ひとりの女への愛で変わっていく心理の葛藤を細かに描いた「ジョン・ミドルトンの心」は読み継がれただけはあるなと思った。すごいです。古いお屋敷に引き取られた孤児ロザモンドが引き起こす幽霊話「婆やの話」、ヘンリー・ジェイムズの「ねじの回転」の元ねたらしいと解説にあったけど、読んでないのでなんともいえないけど、子供と暮らす親の不安定さが反映されて怖い。鉄道建設が背景にある長編「クランフォード」は晩年の長編だけど翻訳があるみたいだから読んでみたいな。

 

ギャスケル短篇集 (岩波文庫)

ギャスケル短篇集 (岩波文庫)

 

  映画はほぼ原作をなぞったものなのだということがわかってびっくり。もちろん、再現できたロマン・ポランスキーもたいしたものだ。最初のテスの登場の場面の美しいこと。白いドレスで身を包んで、大自然のなかで古来からのまつりの踊りを踊る女たちのなかで美しい乙女の姿がたちあがってくる。そして、運命の男と踊れなかったすれ違った出会いの始まりで、物語が動いていく。古くからの素朴さがありながら、学校に行って近代的な自我があるテスの混乱と古い社会のかたすみにいる両親との対比なんかで、現実感があって、立体的に彼女が浮かんでくる。ストーンヘイジからの古い歴史が蹂躙されていく象徴としてのテスがある。映像が浮かぶように描かれて物語にひきこまれて、陶然とした。イギリスは小説を発見した国なんだなと思った。

全然話が変わるけど、追記したい。この前読んだ「死者の書」のまつり、沖縄のイザイホウ、太陽と女性にまつわるまつりって世界中にかつてあったんだな、なんかわたしのなかで繋がってるような。

 

テス 上 (岩波文庫 赤 240-1)

テス 上 (岩波文庫 赤 240-1)

 

  全体としては軽い文章の紀行集だけど、表題のラオスの旅行記はさすがだと思った。メコン川とジャングルに囲まれ、宗教に守られた町が、浮かび上がってくるような。するめクラブの同窓会でいった熊本、今たいへんだけど、落ち着いたら行ってみたいと思った。ああ、旅に行きたいなあ。そんな気分がよみがえってくる。