oohama5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと思っています

古典は奥深い「男色大鑑」

 最近、古典を漫画化したものを読みふけっていて、どれも面白くてびっくりしました。古典を読み込んでるし、現代風にきちんとアレンジされているし。こんなものまで漫画になっているのかと驚いたのが、井原西鶴の「男色大鑑」。私は大学時代、西鶴の「好色五人女」のゼミの授業を受けていて、その時、西鶴は、一通り読んだのですが、男の書く男色ものは生々しくて、読んでない。今回、まんがで読んでみると、「好色五人女」に似たテーマだなと思いました。若い人は性衝動と死の世界があいまいで、かんたんにのり越えてしまう、そんな世界に西鶴は興味があったんだと感じました。かつて殺人を仕事とし、その同志愛の延長として武士の男色はあったようです。死への近さと一緒に、いろいろ性愛が描かれていて面白いです。最終話は、向田邦子の短編集「男どき女どき」のなかの短編をドラマ化した「三角波」を思い出しました。女の漫画家さんが書いてて、目線もかわっているし、脚色もあるだろうし、原作はどんなのか気になります。BLの一つとして書かれていますが、原作への興味は十分もてます。続編は歌舞伎の世界が描かれるようです。

 若いとき読んだとき、五人女のお夏清十郎のはなしで、処女を失ったお夏のお尻の形が変わったとあって、そんなことあるのかと感じましたが、この作品でも西鶴の若衆の背中へのファティシズムが描写されているそうで、彼は背中にグッとくるひとのようです。この本の解説は非常に面白い。また、外国では、この作品だけが翻訳されているのも知りました。あいまいな性の世界が多様に描かれていて、LGBTの研究にも役立っているようです。ただ、「好色一代女」「好色五人女」「世間胸算用」といった作品も紹介されないければ、人間の業をえがいた西鶴の文学としての全容がわからないんじゃないかな。私は日本が誇る文学だと思ってます。なんとかしてほしいです。だいたい、この学者さんの本読みたいなあと思ったんですが、出ていない。なんだかな、寂しいです。

 追記

下巻の若衆編も見ました。イマイチかなあ。エッセイ的な部分の翻案で、漫画化がむずかしいのもあるけど、歌舞伎の基礎知識がないと話に奥行きがでないようです。一冊の本を書くのに十冊分ぐらいの背景がいるのが翻訳物の大変さなんだと実感です。

 

男色大鑑-武士編- (B's-LOVEY COMICS)

男色大鑑-武士編- (B's-LOVEY COMICS)