oohama5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと、書いています。

吉本隆明 「西行論」宗教人として 歌人として

 西行についてもっと考えたいと思って読んでみた。吉本隆明がとらわれがちな西行の人生の伝説をしりぞけ、うたをしっかりよむこむことで、西行の宗教人として、歌人としての意味を語った本。いや、難しいけど勉強になりました。専門の学者さんでもここまで勉強している人は少ないのではないだろうか。西行のうたの多くにでてくるキーワード、心、花、月といったことばの西行的な意味を万葉集、古今、新古今のうたと比較してかたり、分析しているところ、どんだけ、本を読んでいるのだろう。桜、花を通して、特に吉野にひとり庵をむすんで、春の桜のつぼみがふくらみ、咲き、散っていくなかで西行が、宗教的な体験をうたにしていると説明しているところはなるほどと思った。宗教のさとりというものが生きながら死ぬことだとしたら、うたを通して悟りに近づこうとした人なんだろうなとつくづく感じ入った。

 また、西行のうたが世の中にがっしりと関わった武士として歌ったうた、子供のころの童心をうたったうた、地獄を歌った宗教的な、といったいわゆる西行的な自然と心を歌ったうただけでなく多様な世界がひろがっていってることも改めてわかって面白かった。吉本隆明はもともと詩作からはじまってひとだから、うたというものが彼の体をとおして、私たちにしめされていて、彼にしか書けない西行の姿がみれた。西行は人生のすべてをうたにしようとした人なのだと思う。

 最後に吉本隆明が吉野の西行庵を訪ねる章が加えられている。吉野は熊本から始まる中央構造線上にあって他界を感じられる場所とあり、ちょっとぞっとした。人間としての本能が感じるパワースポットらしい。あの時代も地震や噴火が多かったんだなと思い出した。

 吉本隆明は西行の

ちどりなく ふけゐのかたを みわたせば 月かげさびし なにはづのうら

という、月のでている晩、大阪の湿地をひとりぼっちですたすた歩く、清らかでたくましい男の姿を示して、この本を終わらせている。僧形というすがたになって、世の中に対して、精神的な自立をとげる生き方は現代にも通づる何かがある。

 

西行論 (講談社文芸文庫)

西行論 (講談社文芸文庫)