oohama5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと、書いています。

たべものを記録を再現する たべものについて考える本5

  芸術新潮で一年間連載されていた、江戸幕末の文献にあった料理を再現した本だ。江戸料理を再現されている「なべ家」の主人福田浩さんと食文化研究家の松下幸子と京都の名料理やの娘だった作家の松井今朝子さんの共著で、すてきなお料理の写真とうんちくが楽しい本だ。お魚中心だが、今のたべものと変わらないものが食べられていたのに驚く。まず、一月の日本橋のしにせ「にんべん」のかつぶしたっぷりのお雑煮からはじまり、六義園にすんでいた大名のしわすの芝居見物の料理でおわるという粋なものだ。

 江戸時代末、料理は関東の方が進んでいたが、維新関東大震災東京大空襲で、伝統的な料理の作り手が亡くなり、京都に伝統料理が残されたと書かれるとなるほどなと改めて思う。また、江戸時代、流通が発展していて、利根川をとおして、冬とはいえ千葉銚子沖のぶりが埼玉県行田で刺身で食べられているのは驚きだった。これは古典を見るとときどき驚くのだけど、船や馬って車並みのスピードがある。昔はできないことだというのは、思い込みなんだな。

 作家、滝沢馬琴の孫の誕生祝いの料理が再現されていて、お赤飯なんか食べてるのっていいなあと思う。このお祝いの翌年にその子の父である馬琴の息子が亡くなったそうで、最後の家族団らんの記録を再現しているのは、ふだんの困難があっても食を楽しもうという人々の記録を再現したいというこの本の思いが伝わるエピソードだ。同じように料理を再現された「石城日記」、「柏崎日記」といった、下級武士のこまやかな生活を記録した文献も幕末の混乱した政治状況や貧困が背景にあるようだ。それでも、文献の中の人たちはあらやまぐろのお刺身を食べたり、歌ったり、踊ったり、文学を語らったりしているのがわかった。生活をたのしむことの大切さが伝わってきていい。過去を知るのって本来、今に生かすということなんだなあと感じいった本だ。

 

江戸の献立 (とんぼの本)

江戸の献立 (とんぼの本)

 

  

 

  作者は幕末の混乱のなか藩主に意見して、今でいう月給8万に落とされた独身の中年のひとらしい。でも、そんな悲哀を感じさせられない、人々との交流を中心に書き、かわいい絵を添えてこまやかに生活を記録している。

『柏崎日記』に見る食風景―幕末下級武士の喰倒れ日記 『柏崎日記(抄)』本文訳注

『柏崎日記』に見る食風景―幕末下級武士の喰倒れ日記 『柏崎日記(抄)』本文訳注

 

  こちらは長男や親を残して桑名から飛び地の柏崎で暮らした下級武士一家の記録。親に死なれたり、子供を亡くしたり、一揆に巻き込まれたりだったので、ご子孫の方の単身赴任生活からめて不幸ぶりを2000年ごろNHKのドキュドラマ「幕末転勤物語」という題で再現されたらしい。推定年収140万という、貧乏ぶりが注目されたのかな。でも、そのなかでも、たのしく暮らしていた部分に注目して、改めて世にとうたのがこの本らしい。どうやら、先の料理のタネ本。柏崎の新鮮な魚介を食べたり、友達とそば打ちで遊んだりもしているらしい。先の本もそうだけど、家賃はタダだし、助け合いもあるし工夫もあるし、年収だけでは、人生ありません。文献の読み方も世の中が移るにつれて変わってくる。