oohama5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと思っています

萩尾望都「王妃マルゴ」

 久しぶりに萩尾望都を読んでます。「ポーの一族」の頃、読んでたんですけど、 時代の変化もあるけど、男女の性愛のせかいまで踏み込んでいて、BLの元祖的なひとがここまできたかと感嘆しています。エッチなシーンの主人公の背中とお尻が色っぽいです。絵で多くを語る力は衰えてないです。「王妃マルゴ」はフランスに一昨年かな、行かれたとき、フランスものを書いてくださいとのあちらのファンの要望と映画「王妃マルゴ」にひかれて書かれたものらしいです。私もイザベル・アジャーニが主演した「王妃マルゴ」を見ているのですが、原作のフランスの文豪デュマの小説は有名で、おなじみな話であるせいか、やたらわかりにくいんですね。アジャーニのゴージャスな美貌と映像美は素晴らしいんですが。

 こちらのほうが断然わかりやすいです。歴史的背景の説明のていねいさもありますが、政治的な立場から、宗教的な対立に巻き込まれて人殺しを見続けること、権力者であることで歪んでいく、王妃カトリーヌ・ド・メディチの王子たちの変化、そして、主人公たる娘のマルゴの健やかさが傷つけられていくのを見せられるのですが、特殊な境遇の人の話でなく、共感できる普遍的なはなしに落とし込んでいく力技ですごいです。綿密に描かれたきらびやかなファッション、ところどころのユーモアとポップな画面、きびしすぎない人物描写、エンターテメントとして楽しいけど、深い。

 女性目線でマルゴが怖くてエロい人でなく、健康な性欲をもつ女性が恋にやぶれ、結婚にやぶれ、生きていくうえでの恋多きひととして描かれているのがいいです。フランスではキリストの信仰とかあって、ここまで踏み込めないのではないかな。「ベルサイユのばら」を意識して、女性の生理の目線と東洋からみたフランスの歴史を萩尾望都流に描いているます。ちゃんと今とモラルがちがう中世のひととして、納得できるように描いているのもいいです。

 怖い話なんで、果たして、王室が新教徒を虐殺した「聖バルテルミの虐殺」まで読み続けることができるかと心配ですが、その後、史実ではマルゴは別れた夫フランス王アンリ四世と親友的な関係を結ぶらしいので、そこまで、どう話をもっていくのか楽しみです。たくさんの人に読んでもらいたいという志を感じます。漫画は読みやすいものなので、多くのひとをその中で深いところまで導いていける。そんなまんがの力を信じたいと思える作品です。今、大衆小説な、なにかを追ってるのはまんがじゃないかと思います。心がゆさぶられました。

 

王妃マルゴ volume 1 (愛蔵版コミックス)

王妃マルゴ volume 1 (愛蔵版コミックス)

 

 

 

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