oohama5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと思っています

不器用な小説

 推理小説の古典で他に好きなのは、A・A・ミルンの「赤い館の秘密」だ。トリックとか大したことはないけれど、のんびりしてユーモアのある語り口が好きだ。それもそのはず、「クマのプーさん」の作者の小説だ。あとがきで、プーさんで有名になったあと、童話だけではないぞっと決心して、流行の推理小説を書いてみたとあり、負けん気で前向きな人間性が見えて、面白い。どんな複雑なトリックよりも、文学としてすぐれていること、作者が面白味があることが、地味でも印象に残る小説だ。アガサ・クリスティの初期の小説で、「茶色の服を着た男」というのがあるが、当時の友人と話していると、彼女も好きなことがわかった。あとで、調べてみたら、夫との不仲を描いた、自伝的な小説らしい。その時勢に乗ってなくても、切実な不器用さがあるものは、深い共感を得られる。そして、それは、時空を超えるんだなと思う。

 

赤い館の秘密 (創元推理文庫 (116-1))

赤い館の秘密 (創元推理文庫 (116-1))

 

 

 

茶色の服を着た男 (創元推理文庫 105-21)

茶色の服を着た男 (創元推理文庫 105-21)