今週のお題「夏支度」
萩尾望都の初期の漫画に「小夜の縫うゆかた」という短編がある。14歳の少女が初めてゆかたを縫い上げるのを幻想的に描いた作品だ。初夏の夏葉がのびるようなさわやかさ、少女がおとなになっていく喜びが歌い上げられ、いたく、心に残った。夏の夜のお祭りのあやしくも激しい空気をいろどるゆかたを縫う。それは、生々しくも美しかった。このジメジメした梅雨の時期、夏の衣類をととのえることは、来るきびしい暑さをうけとめる女の喜びだと思う。新しいサンダルや夏帽子、涼しげなブラウスやちょっとよそいきのワンピース、そういったものをそろえる。時代はかわっても、夏のきびしさは変わらない。そういったつらさを夏支度をする少女で肯定したこの作品を、いつもこの季節に思い出す。
半神 自選短編作品集 萩尾望都Perfect Selection 9 (フラワーコミックススペシャル)
- 作者: 萩尾望都
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2008/02/26
- メディア: コミック
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