たまに、午前中の忙しい時間だけど、BSのこの枠を見出すことがある。この番組は、日大芸術部のゼミ研究と再現ドラマを組み合わせて作ってあり、伊勢市出身の詩人、竹内浩三の戦死時と同じ21歳の柄本佑が主演しています。冬に生まれた蛾が死んでいくのをうたった詩を聞いていて、生殖もせずにという言葉に、まず、引き込まれました。そして、「骨のうたう」という詩が朗読され、戦死やあわれという言葉を聞き、この詩を作った人だとわかりました。とても、皮肉でしずけさのある詩で頭の片隅に残っていたのです。
だんだん見ていくと、彼が日大芸術部映画科の卒業生であることがわかってきます。あの戦時下で映画科があったんですね。そして、同郷の小津安二郎に憧れて、映画監督をめざしていたこと、漫画の本をつくっていたこと、そして、宮沢賢治を愛読していたことにびっくりです。先のみえる少年だったんだ。お金持ちの呉服屋の息子だったので最新のものを得られたということもありましょう。しかし、この映像を見ながら、戦争のあとがみえる人は、結構いたのだろうなって感じさせられました。竹内浩三は、くりぬいた宮沢賢治全集に、筑波での軍隊体験を書いた日記を入れ、姉にたくします。それと残されたいくつかの詩が、戦後、口コミで広がっていったようです。表現すること、それに対する執念とはなにかを考えさせられる映像でした。
ぼくもいくさに征くのだけれど―竹内浩三の詩と死 (中公文庫)
- 作者: 稲泉連
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2007/07
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このドキュメンタリーのきっかけになった本のようです。