oohama5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと思っています

京都国立博物館「鳥獣人物戯画」展 可愛いの意味

 

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京都国立博物館 | Kyoto National Museum

 またしても、いきものネタです。関西に行くための楽しみとして、この展覧会を目的にしていました。有名な「鳥獣人物戯画」が補修されたので、全巻展示され、そして、いっしょに京都栂尾にある高山寺の宝物が公開されたからです。行ってみたら、一時間待ちなどあたりまえです。だいたい、この前、鳥獣戯画図は、東京に来てたぐらいで、いつも出張している、おとうさんのような感じです。所蔵されている博物館でも、なかなか、みられないのです。だから、この展覧会は、開祖明恵上人の考えと、マンガの祖であるとされてる鳥獣戯画に、ひさしぶりに会いたい思っている人が多かったんじゃないでしょうか。明恵はあまり知られていない人ですが、日本の文化に深く関わった人だと思います。わたしにとっては、見たいと長いあいだ願っていたこれらを、一度にサラッと見れるよい機会になりました。

 で、見た感想です。描かれたどうぶつの下半身がたくましいのが、生々しかったです。足腰しっかりしているといいましょうか。動物のすがたを借りていますが、水浴びやすもう、そして、法事ごっこの場面などをみると、子供たちのあそびをどうぶつなぞらえて、描いたものだと思いました。そこには、ユーモアとおおらかさがあります。そして、皮肉ななまぐさい目線も感じます。

 この絵巻は四巻あって、有名などうぶつの絵は、一巻目 甲の巻です。二巻目 乙は、牛や馬などのすがたと空想上のどうぶつがえがかれています。三巻目は、今回の修理でわかったのですが、おもてに人の風俗を、裏にそれをまねした動物が描かれていたそうです。それをはがして、つなげて一巻になっていたようです。このことは、この絵巻の背景にある、私は、人は生き物と対等なのだという考えをあらわしているような気がします。四巻めは、人のおもしろいふるまいが描かれます。甲のうさぎさんやカエルの絵は、書かれてしばらくして、平泉でも真似したものが見つかったそうで、元祖、キャラクターのようです。ピカチュウみたいな扱いだったみたいです。いっしょに人のかわいらしくて、滑稽なすがたが描かれていることも、この絵巻の忘れてはならない大事なことです。

 この展覧会は、樹木の中にえがかれた明恵の画像や、彼の夢を記録した、心理分析の元祖のような「夢の記」、彼がはじめて日本で栽培した、中国から来たお茶のたねをいれた容器なども展示されています。そのなかで、印象に残ったのは、彼の死後、彼をまつったお堂に、お茶のお釜といっしょにおさめられた、こいぬの彫刻です。なんでも、とても交流のあった快慶の弟子であった人が作ってあげたようです。明恵は伝記によると、みかんで有名な和歌山県の有田の出身で、豊かな土地で、両親の愛に包まれた子ども時代をすごしたようです。しかしながら、十才ごろまでに、相次いで親を亡くして、寺に入ったのです。想像するに、幼いころ、犬を飼っていたのでしょう。その兄弟のようにすごした犬への思いをくみとって、近しいひとたちがお堂の中に置いてあげたのだと思います。彫刻は、リアルで可愛らしく、生きているようで、こいぬの暖かい体温が伝わってくるようです。仏様もかわいいものが多かったです。

 この彼が、可愛らしいものが好きということは、その後の日本の文化に影響した、深い意味があるのだと思います。私は、「鳥獣人物戯画」もその考えのもとに高山寺にあったと思ってまちがいないと思います。これからも、これらのものが、色々なところで展示されていくと思います。そのときにかわいいの意味を感じとってみてください。私も、ずっと考えていくと思います。

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