oohama5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと思っています

 言えること 言えないこと

  アメリカの緊急電話119に、宅配ピザをくださいとのある女性からのいたずら電話がかかって来て、それをとった係の人が、これは、何かあると感じて、警官を派遣したところ、DV被害の真っ最中だったということを、ネットで読んだ。こういったいたずら電話をかける人はなんらかの鬱屈があるわけで、それがたまたま、必要な手段がある人に繋がったわけだ。人は重要なことをあいまいな形で言ってくることが多い。恋人同士でも別れの言葉は、最初、些細ないやで始まるのである。彼女がお互いが好きだった焼き肉やさんに一緒に行くのをさりげなく断ったりね。そこで、変だなあと感じるのが、相手に対する愛情であろう。その言葉をしっかり聞くというのは、相手に強い興味があるからだ。

 この場合は、電話の係の人が、仕事に対して強い使命感をもっていて、愛情を感じていたのだと思う。それは、警官を派遣することで、困っている人を助けることができるという信頼だ。だから、いたずら電話から、用件を引き出すことができたのである。逆にいうと、電話をかけた女性が、これは警官を派遣してくれると助かるということが明確に分かっていて、電話をかけたから、言葉の中の助けを求める声が聞こえたのである。いたずら電話とは、相手がそれに対する手段を持たない人にかけるものなのだ。だから、聞かされる方は消耗するし、かける方は何度もかけないと気が済まないのである。生きたいという力が強い人は、この明確に自分を動かしてくれるものを嗅ぎ分ける。そして、そのことにかけてみるのである。確かにそれは、ほとんど、徒労に終わる。だが、その些細な振動を聞き分ける人は必ずいる。そして、それに対しての方法を持つ人はいるのである。たぶん、生き抜くということは、その些細な振動の受け取りができるということなのだ。

 この話を読んでて、思い出したのは、レイモンド・カーヴァーの短編だ。ロバート・アルトマンの映画にもなっている。アメリカという他者との共存が強く必要な社会だからこそのピザの話である。なんだか、ひっかかる話だから、書いてみた。こちらの小説は、バースディ・ケーキの話である。これも食べ物の注文にまつわる話だ。

 

愛について語るときに我々の語ること  THE COMPLETE WORKS OF RAYMOND CARVER〈2〉

愛について語るときに我々の語ること THE COMPLETE WORKS OF RAYMOND CARVER〈2〉