oohama5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと思っています

さよならオレンジ 言葉の力

 

さようなら、オレンジ (単行本)

さようなら、オレンジ (単行本)

 

  「子連れ狼」の原作者の小池一夫さんが、週刊現代の中で、心に残った10冊という文章で、最近の作品として、唯一、紹介されていました。そして、偶然、近所の、その書店にあったのを購入しました。前から、読みたいと、気になってました。

 読んでみると、書名にある、オレンジとは、太陽の色のことです。この本は、朝日のオレンジの色の描写で始まり、夕日のオレンジで、話が締めくくられています。私も、日の出のオレンジ色を眺めるのが好きなので、いい出会いをしたと思いました。

 主人公は、オーストラリアに移民した、アフリカ難民の女性です。彼女は、生き抜くため、自分の尊厳を守るため、英語の語学学校に通います。そして、そこで、出会った、移民した、日本人女性とイタリア人女性と、友情を結びます。物語は、彼女の心情と体験と、日本人女性が、尊敬するオーストラリア人大学教師に書く、主人公に対する彼女の思いと、日本人女性自体の体験を綴った手紙の、二本立てで、進められます。

 複合的な構成が、物語にリアリティを与えていて、見事です。物語ること、言葉を獲得していくこと、言葉を表現することを通して、生き抜く事を描いた作品です。

 私は、しばらく、今、現在、書かれた小説に、遠ざかったっていたのですけれど、改めて、新しい小説の数々を、読みたいと思わせてくれる本でした。