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oohaman5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと、書いています。

花子とアンの時代、『「パンとペン」社会主義者・堺利彦と「売文社」』の闘い』

 最近、朝ドラの「花子とアン」に、はまっています。以前から、読もうと思って、挫折していた、黒岩比佐子著 「パンとペン」を、読みました。堺利彦は、明治三年生まれで、昭和八年に亡くなった、文学者であり、社会主義者である人です。この人は、無類の世話好き、社交家であったので、膨大な人物とかかわりがありました。人名と、関わった人の、人となりを、読んでるだけで、めまいがしました。

 「花子とアン」の宮本さんと蓮子さんこと、宮崎龍介と柳原白蓮も、ちょこし、出てきます。ドラマの、東大生のろくでもなさそうな、グループ、あれは、「新人会」といって、堺利彦の自宅で、定期的に集まりがある、社会主義学生の団体だったそうです。そのひとりは、堺の16歳の娘さんと結婚したいとか、騒いでいたりしたようです。大正デモクラシーや、民本主義で、有名な吉野作造の弟子みたいな人たちだったようですが、お家を貸してあげてたのですね。柳原白蓮は、伊藤あき子と名乗っていたころ、同じ雑誌に、執筆陣として、名を連ねたりしています。

 夏目漱石と猫好き繋がりで、淡いおつきあいがあったり、文学者として、いろんな作家に、かかわっっています。特に、有島武郎は、亡くなる直前、堺に、形見の写経を贈ったそうです。

 翻訳家としても、有名で、バーナード・ショーの「マイフェアレディ」原作を、初めて訳しました。初期に、「ルパン」を訳した、ひとりでもあります。そして、お棺に入れるほどの自信作は、ジャック・ロンドンの「野生の呼声」という、犬の生態を描いた小説です。当時のベストセラーで、社会主義者としての著者が、犬に託して、自然と社会の関係を、科学的成果を取り入れて書いた、小説だそうです。

 そして、社会主義者としては、「大逆事件」の幸徳秋水の親友にして、盟友であります。「平民社」で、一緒に、日露戦争に、反対しました。初めて、戦争というものに、反対したひとりです。そして、大杉栄の最初の奥さんと、娘を生んで亡くなった最初の奥さんが、姉妹だったりして、彼とも、深い関係にありました。大杉栄は、関東大震災のどさくさに、甘粕大将に、殺された社会主義者です。私は、この辺りの歴史を、はじめて、詳しく知りました。また、晩年、共産党の第一回結党のときの、名目上のリーダーでもありました。

 そして、「大逆事件」のあと、なかまの社会主義者を守るために、「売文社」を作りました。「売文社」とは、代議士の演説、学生の論文から、商品の宣伝文、結婚式の式辞やら、あらゆる文書の代行をした会社です。そして、英語、フランス語などの翻訳も行いました。おもには、薬の効能などの、解説文が多かってたようです。また、出版社の下請けとして、本や雑誌の編集も行いました。文章に関する、ありとあらゆるものを代行する、とても、ユニークな会社だったようです。

 下請けで編集した本には、文豪の名言を集めた、薄くて、ポケットに入る、「内外文豪美辞名句集」20巻、夏目漱石トルストイドストエフスキー曲亭馬琴なんかが、入っている、今で言う、botみたいな本や、「世界通」という、地球の歩き方の走りのような本もあって、今でも、読んでみたい気がします。そして、「へちまの花」という、ユーモアの固まりの中に、社会主義を密かに主張した、機関紙を出していました。

 社員には、英語、フランス語、ドイツ語その他といった、語学の達人だった大杉栄や、幸徳秋水の恋敵の荒畑寒村、そして、宇野千代の夫のひとりで、「人生劇場」の尾崎士郎がいました。学校を中退して、初めて、働いた、この会社のことも、「人生劇場」で描いているようです。

 このように、堺利彦は、働きもので、世話好きで、ユーモアがある、家族思いの、地に足の着いた社会主義者でした。そんな、埋もれてはいるけれど、人々に影響を及ぼした人生を、描いています。

 売文社の社員で、彼の歴史的作品の業績を継いだ人として、白柳秀湖がいます。彼は、社会主義から、足を洗い、町の歴史家として、「民族日本歴史」という本を書いた人です。彼は、この中で、古事記日本書紀は、シベリアと南方の歴史の伝承でできていると書いて、松本清張を感心させました。のちに、松本清張は、社会をえぐるような歴史物を書いたのは、その影響だと語っているようです。

 著者の黒岩比佐子さんは、2010年に亡くなっているのですが、明治大正史を描いた本を、編集されたり、著したりされているようです。今も、その著書は、静かに、読まれているようです。他の本も読んでみたいです。