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oohaman5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと、書いています。

ありふれているけれど、本質的な問題「アンナ・カレーニナ」

 

 

アンナ・カレーニナ〈上〉 (新潮文庫)

アンナ・カレーニナ〈上〉 (新潮文庫)

 

 

 私が、好きな小説に、トルストイの「アンナ・カレーニナ」がある。この小説は、アンナという人妻が、お役人で、エリートのカレーニンというご主人と、幼い男の子を捨て、若い軍人のヴロンスキーと恋愛し、最後は、その男に嫌われて、鉄道自殺するという小説だ。その当時、最新だった鉄道が、舞台だったりする、近代小説の走りと言われる小説だ。そのなかの心理描写は、まるで、細密画を見ているようで、面白い。

 私は、この小説を思い出すと、唐突に、ある風景を思い出す。それは、インドのお猿さんたちの、ドキュメンタリーの映像だ。ある種の猿は、ボス猿が、立場を追われると、いっせいに、前のボス猿と、メスたちの間に生まれた子供たちを殺すそうだ。そうして、子どもを失ったメスは、母であることを忘れて、発情して、次のボスの子どもをやどす。

  いやあ、我ながら、世界文学に対して、妄想だなあと思う。しかし、このロシアの貴族社会を描いた小説は、魂と肉との相克を描いたものである。主人公のアンナは、トルストイの描写では、貞淑な妻を装っているが、生命力あふれる女性である。だから、妻をないがしろにし、ほったらかしにしている夫を裏切り、より、男として条件のいい、若い男に走るわけである。

 だが、彼女が、板挟みになるのは、夫ではなく、愛する息子への執着と、男への欲望だ。これは、私が、思うに、母性という奇麗ごとでなく、そこにある、子孫を維持することと、新たな子孫という、身もふたもない話なんだと思う。その、露骨さが、見えるから、不倫は嫌われるのである。

 主人公のアンナは、生真面目で、自分の感情を閉じ込める人である。それだから、自分の欲望に、足をすくわれたのである。たいがいの人は、この作中の人物たちと同じように、いい加減に、そこのところをごまかして生きている。それは、私を含めての読者も同じなのである。だからこそ、どこか、生命力が強すぎて、自分に、素直にならざる得ない人に共感する。そこに、ロマンがあるのだ。

 しかし、年を経ると、また、色々なことがみえて、味わいぶかくなった。子どもが、アンナを嫌い忘れるくだりは、子どもって、そうだよなと感じる。母親に捨てられて、自分が、素直に甘えられる人を失ったのである。無力な幼い子どもにとっては、自分に対して、決して無条件に暖かくなれない大人たちと、生きていくのだ。それすら、見えないアンナは、ずいぶんと、浅はかなのである。

 そして、アンナによって、ぼろぼろにされた若い男、ヴロンスキーのことが、哀れでならなくなった。彼は、社会的地位も、友人も、失う。そして、男に執着して、仕事さえ邪魔する女に、自殺までされるのである。たまったもんじゃない。しかし、そこに、追い込まれる男は、人間らしくて、美しい。

 私が、時々、この小説を思い出すのは、人間は所詮、動物なんだな。自分の中の自然を大切にしなくてはと、自分に言い聞かすときだ。

 19世紀のロシア文学は、面白い。若くて、馬力のあるとき、いくつか、読んでおいて、よかった。こうして、ためになる。ただ、長くて、内容が重くて、読むのがたいへんだ。だから、ドストエフスキーは、「罪と罰」しか、読んでなし、「カラマーゾフの兄弟」は、読んでなかったりする。まあ、それは、それだなと思っている。

 

アンナ・カレーニナ [DVD]

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  「戦争と平和」もよかった。ロシア版の映画も好きです。ヒロイン、ナターシャを演じた、リュドミラ・サベリーエワが、可憐ですし、ロシアの風俗が興味ぶかいです。映画としては、古いけれど、感動します。

 

戦争と平和 [DVD]

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