oohama5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと思っています

「仲蔵狂乱」松井今朝子  鍛えられた、生き残ったものしか、表現されないもの

 写楽の展覧会

世界から集う「写楽」 特別展「写楽」 東京国立博物館 平成館 特別展示室 2011年5月1日(日) ~ 2011年6月12日(日) WEDGE Infinity(ウェッジ)

で、芝居絵を見た。そのとき、その濃厚な世界を見て、歌舞伎に興味がわいてきた。それで、この連休、この本を読んでいた。

 中村仲蔵のことを知ったのは、最近のことだ。落語の題材にも、なっていたそうだけど、全然知らなかった。その、江戸中期、孤児から一代で大俳優になった「中村仲蔵」の一代記が、この小説だ。

 彼は、江戸時代の歌舞伎の世界って、大変だったんだなあと感心するくらい、色々ないじめやら、トラブルに巻き込まれる。その中で、芸をきわめ、人を感動させる役者にのし上がっていく。

 

 その泥と汗にまみれてしかできない、新しい物を作り出す活気にあふれた歌舞伎の世界が描かれている。今、芸能の世界が、そんなところ、下賎と言われるところでなくなったのは、いいことだ。だが、鍛えられ鍛錬された圧倒的な芸や人格もなくなったのだなあと感じた。いいとか悪いとかではない、確かにそこにあったということが、大切なのだと思う。

 仲蔵の師匠である厳しくも暖かくもある、八代目勘三郎、したたかで野心家の四代目松本幸四郎。歌舞伎界の名優たちの姿もすさまじかった。

 

 

仲蔵狂乱 (講談社文庫)

仲蔵狂乱 (講談社文庫)