oohama5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと、書いています。

 橋本治 昔は今にひきづられる

 橋本治の小説を読んでいると、現在から、過去を勝手に解釈していてる、自分に、はっと、気づく。それが、面白い。

 橋本治の本を最初に読んだのは「桃尻娘」だ。ピンクヒップガール、泥臭いなあ、そんな軽い気持ちで読み始めた。日活ポルノになったりしましたね。

 

 読み続けていて、ああこの人は物事の起こったときの感情を読み解ける、希有な才能の持ち主だなあと、思っている。私が一番好きな小説は、ゴミ屋敷から、昭和を読み解いた「巡礼」だ。すごい小説だと思う。1950年代まで、仕事は歩いていける範囲で見つけて、人は生きていたが、電車で何駅か先で、一般庶民も働くようになった。生活に変化が起こった。そのあたりの描写は圧巻だ。

 

 そういうことは、本では、なかなか、描かれていない。その当時の映画やら、大衆小説やらを読む必要がある。それを、まとめて、文章で物語れる人は少ない。

 橋本治が、今は忘れられた、大衆作家、有吉佐和子山本周五郎を評価しているのは、そこだと思う。有吉は、「紀ノ川」や「香華」で、明治から昭和の地主階級の生態を描いた。周五郎は貧乏に押しつぶされる人間の実態を描いた。「あおべか物語」の民俗的アプローチも興味ぶかい。

 

 これらは、父の愛読書だった。父には現実味のある小説だったのだ。私は自分がどこから来たのか、知りたかった。私の両親の過去が知りたかった。私を縛っている何かを知りたかった。橋本治はそのヒントを教えてくれたと思う。

 橋本治は本の虫である。東大の国文科の出身なので、その読解力を武器に、「古事記」や「源氏物語」の現代化をしているが、もっとも大きな仕事は「双朝 平家物語」だ。あまりにたくさんの資料を参考に膨大な量の情報がこもっているので、読みこなせない。いつか、読みたい本なのである。

 

 チラ見したなかで、ある天皇がお妃を気に入ったのは、大金持ちの娘で、最新流行の着物や調度や、紅に囲まれているので美人だという、ところがある。実は私も若いとき、女子大の先輩方が子供を生んでも、娘さんのように、美しいのに、びっくりしたことがある。

 同じように20前後には、美しかった、下町の同級生たちが、いたいおばちゃんになっているのが、当たり前だったからだ。今は日本全体が豊かになったので、いくつになっても、若々しい美人が多い。なので、昔は当たり前だった、貧富の差が、身ぎれいさだと忘れていた。

 

 豊かさが時間を遅らせる力があること。貧しさは人をそこねる力があることは、覚えていていいことだ。

 

 

初夏の色

初夏の色

 

 

 その、昔は当たり前だけれど、今は失われてしまった、当たり前を思い出させて、もらった。そんな、橋本治院政期の歴史を勉強して、日本人の組織の作り方のパターンを示した。ベストセラー「上司はおもいつきでものを言う」で、的をついたのは、当然だと思う。人は過去を無自覚に、模倣するからだ。橋本治の本には、今からの過去の解釈でなく、物事が起こったときの感情や常識がこめられている。