oohama5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと思っています

見ることの喜びが映画の喜び

 映画を見ることは、見ることを楽しむことだ。なんだ、あたりまえだ。わかったようなことを、えらそうにと思われたかしらん。

 映画評論家の淀川長治さんが、ベルナルド ベルトリッチの「ラスト エンペラー」を解説したとき、清朝最後の皇帝溥儀が、自分の家庭教師に後宮を案内したとき、後宮のドロドロの池に古い舟に乗った、豪華な、しかし、不潔な感じの衣装をまとった女たちを、母たちですと、紹介するシーンついて、語っていた。

 

 陳腐だと批判する人が多かったらしい。しかし、このシーンひとつで、後宮というものを表した。溥儀少年が閉じ込められている、後宮の古く、不潔だが、ゴージャスな感じが、たくさんの説明なしに一目で分かるからだ。それが映画だと、彼は語った。そして、その映像が溥儀の人生をどう動かしてきたか、それを語るのがこの映画なんだなあと、とても、印象深かった。そのことを心に留めて、映画を見ている。

 

 人間の目の中に入るワンショットの中には、本当に色々な情報が込められている。普段、目的に追われていて気にもとめない。お腹が空いて、ご飯を食べに、近所のファミレスに行くとする。ファミレスの店員、お客、内装、テーブルの上の様子、料理が入ってくる。気にもとめていない、ウエートレスの制服、お客さんのかっこいい帽子も見ているのである。それが見ることすべてだ。

 

 しかし、同じことを見ていても、人によって違う。お腹がすいていてことと、制服が結びついている人もいるのである。その強調されたことを切りとてって、映像で語っていく。時間をあやつって、語る。それを見るのが私の映画の楽しみだ。

 

 映画を見ることは、人それぞれの感覚をかいま見ること、体験できない出来事を想像してみることだ。結構、やくざな楽しみです。でも、それが必要なのも人間なんだなあ。これからも、私は映画を楽しみに、ちょっぴり、人生をカラフルにしていこうと思っている。