いやあ、おもろかった。語り口に酔わされました。私は東映の映画は、ほとんど見てないので、ついていけるのかと思ったけれど、私のすぐ、隣合わせににある世界、男の世界の滑稽さを描いたもので、興味深かった。女の私から、どうよという、エピソードも多いけど、面白さが、まさる。
東映の初期の量産期の映画は、かつて、テレビで、昼下がり、チラ見してました。美空ひばりの歌、萬屋錦之介らスターが出演し、群舞ありで、たまに見ると、お祭りみたいで、興奮しました。スターたちは、あくが強くって、さほど、好きではないけれど、見入ってしまってました。
インド映画の「ムトゥ 踊るマハラジャ」を見たとき、似てると思いました。この映画を何度もリピートしては、見てました。そして、あの東映の映画たちをしのんでいたのです。私のミュージカル映画好きの原点のひとつだと、気づかされました。楽しかったんだ、憂さが晴れて。
スターがきらびやかな衣装で出ている。踊りのような、立ち回り。グラビアのような、女優さんの、存在感。超美人だけど、存在が薄いのも、似かよっている。たまに、食べた、マシュマロを、クッキーではさんで、チョコでコーティングした、森永のエンゼルパイの強烈な、わかりやすい、歯にしみる甘さと、同じでした。
さて、インド映画は、今、東宝映画的に洗練されつつあるようですが、日本の、京都の変化とともに歩んだ、東映太秦の映画は文芸路線、エロ、そして、鶴田浩二、藤純子の任侠もの、「仁義なき戦い」に進んだらしいです。
この辺りの映画は、題名だけは、よく知っています。実家の近くに、大きな畳二畳分ぐらいある、立て看板があったからだ。それを見るのが、臆病な私の、密かな子供時代の楽しみのひとつだったからだ。
きてれつな題名と、毒々しい看板絵。その題名を考えだしたのが、名物所長の岡田茂であることを、この本で知った。岡田茂、うん、面白い。その映画たちのことも、色々な謎がとけて、面白かった。
さて、この本は、田舎の旧家の出の、怖いもの知らずの青年たちと、京都の五条七条の職人かたぎのでたらめな人たちとが、仲間になって、映画を通しての日本の変化と、どう戦った来たかの戦記である。魅力的で、とても、でこぼこした人たちが、たくさんでてきます。まるで、映画活劇のように、興奮させられました。