oohama5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと思っています

 山田洋次 小さいおうち

 今日、山田洋次の最新作、「ちいさなおうち」見てきた。初日だったので、熱心な山田ファンの、監督と同性代の方々がほとんど。ちと、若くもない私だが、気恥ずかしかった。

 

 興味をもったのは、監督と同じように、直木賞をとったとき、原作の小説、中島京子の「ちいさなおうち」を読みたいと思ったからだ。御年80歳の監督と興味がいっしょとか、どんだけ、老けてんのかと思ってしまうが、違う。多分、ある絵本が象徴する、家への思いが一緒だからだ。

 

 アメリカのリーバートンの絵本、「ちいさなおうち」。この本をモチーフにしていることが、本の表紙で訴えられていたからだ。家をめぐる時間のお話。家は変わらないけれど、時間は流れている。戦前からのアメリカの歴史が書かれた本。そして、家は一度は打ち捨てられるが、再生する。時の流れと、人間はどう接して、戦い、勝つかを、描いた絵本でとても、心に残った。

 

ちいさいおうち (岩波の子どもの本)

ちいさいおうち (岩波の子どもの本)

 

 

 しかし、この、中島京子の小説は違う。アメリカに象徴される、近代的で、清潔な文化にあこがれて、作られた、東京郊外の生活は、無惨にも、中にいた家族とともに、打ち壊されてしまうのである。時間は止まってしまった。文明生活を得るために戦争に巻き込まれる皮肉。そこに、痛切な物語が綴られた。

 

小さいおうち (文春文庫)

小さいおうち (文春文庫)

 

 

 その原作のなかにある、近代的でモダンな生活の細部を、ていねいに山田監督は映像で描く。それが、失われてならないものだったからだと思う。そして、私たちは何かしらの形で簡単に見失ってしまうことを知ってしまった人だからだと思う。

 

 そして、人は自分の気持ちさえ、ままならないということだ。それは、多分、戦争を呼び込むものと同じ性質のものだ。欲望というものは決して、自分でさえ、ままならないものだということだと思う。

 

 痛切で、美しいおうちのお話だ。見て、よかった。
『小さいおうち』予告編 - YouTube