大阪市内の下町出身の私は、幼いとき、貧乏な友達と話していて、本の話ができなかった。本を読まない人は漫画すら読まないんだなあと、びっくりした。結構いた。
私は下町では裕福とされていたけれど、実はたいしたことなかった。一時、親が酒乱の父親と兄弟を養っていたからだ。両親は、だから、一生海外に行ってない。
しかし、私は、母方のいとこのところに行けば、童話やらが書庫にあって読み放題だったし、絵本も買ってもらっていたし、子供映画も東映と東宝を見ていた。美術館も幼いときから連れて行ってもらっていた。また、たくさんの人に守られていた。やはり、都会の恵まれたほうの娘だったのだ。
本を読むのは修行がいる。絵本から、積み上げなければならないこと。そして、本が読みこなせなければ、勉強ができないことを、中産階級が多い、高校に行って、知った。だいたい、中学の英語の教科書が違うのだ。みんな、読みこなせなかったので、一番簡単なものだった。一緒に進学したものは、戸惑ってしまった。
もちろん、教育にたづさわる先生たちは知っておられて、小学校の五六年のころの名物教師だった担任は、グループを作って、落語の話術の勉強会を主催していた。子たちにわかりやすく、飽きさせないためだ。かろうじて残った、貸本やの親父は、手塚本をみんなに薦めていた。医者は栄養指導をしていた。漬け物を食べ過ぎると、妊娠中毒になって、命も危ないことを皆が知らなかったからだ。教育がないことが、貧乏につながることを、何となく、皆知っていたから、そういったことをしたのだろう。
そういう人がいなくなって、マンガも読めなくなったのはこれは必然だ。
マンガが「読めない」若い衆から - king-biscuit works 昔も当たり前にあった。でも、中学を卒業する頃には、ほとんどの人がマンガを楽しめるようになっていたと思う。それが、わからなくなったのは、貧乏が身近でなくなったからだ。教師になる人も、まさか、教えなければ、絵もかけないし、マンガも読めないとは知らない人が多い。また、年配の教師も経験として、伝えてない。
今一番、知っているのは、真ん中ぐらいにいる若ものたちとお母さんたちだ。
不登校経験者の長男から、私はtwitterの炎上の原因を知った。パソコンをいじれる若者は実はとても少ないのだ。その子たちが、便利すぎるスマホを使いこなせられないらしい。マンガも読めない訳だから。また、任天堂のゲームをいじれない子も増えてるらしい。ポケモン、難しいし、根がいるんです。
西原理恵子が、メジャーになったのは、実はなかったことになっていたことをユーモアで描いたからだと思っている。彼女を読んでいるのは、今子育て、真っ最中のお母さんたちが多い。実感として、貧乏がひたひたと浸食してしているのが、わかるからだと思う。まず、敵を知らなければね。
まあ、私も、子育てしながら、子供のときの経験の意味が、骨身にしみたのだけれど。主人は自分の裕福さが、わからなかったし、私は、自分が傍観者として、うっすらと、見たことの意味がわからなかった。社会が子供を育てることがわからなかった。色々とつらい経験をした。
これは、でも、済んでしまったことだ。これからも、世の中の隅っこで考えながら、できることをやっていくしかないなあ、と思っている。