oohama5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと、書いています。

忘れられない人

  子どものころ、実家で働いている女の人の部屋に、何人かの人に連れられて、遊びにいったことがある。 宝物を見せてあげるといって、押し入れの中を見せてくれた。中にきちんとかたずけてあったのが、たくさんのきれいなお菓子の紙の空き箱だった。うらやましかった。お菓子が、まだ貴重な時代で、パッケージの箱も凝った物が多かった。

 

 こんなに、きちっと、取っとくなんて、だらしない、私では、できないなあ。とか、取っときたくても、おかあさんにじゃまって捨てられるなあと思った。でも、素敵でしょって、見せてもらっていながら、同時に変な気分がした。

 

 彼女は奄美大島の出身で、中学を卒業して、大阪に出てきた。里帰りすると、鹿児島銘菓のポンタンあめを、いつも、くれた。とても、かわいがってくれた。

 

 それから、しばらくして、頭が足りない、そんな悪口も聞かされるようになった。何度も、資格試験を落第していたからだ。また、彼女が、整形にはまっていることもを聞いた。何度も手術をしたようだ。それは、とても、最先端のことだと、自慢しても、いたようだ。稼ぎもかなり、つぎ込んでいたのではないだろうか。お金にきたないという、噂も聞いた。後ろめたい、男付き合いをしていることも、知った。

 

 だんだん、気味が悪くなって、付き合いがなくなった。中学生ぐらいに、道で会ったとき、とても、きれいな笑顔で、話しかけられたのを、逃げるように避けた。それからの消息は私が大人になり、親が亡くなったりしたので知らない。

 

 今も、なぜか、ときどき、思い出す。赤い口紅が似合っていたのを思い出す。あるとき、ふいに、わかった。ああ、そうなんだ。彼女は若い時、きれいな人だったんだ。わあっと、叫びそうになった。そして、きれいな空き箱のことを思い出した。せつなかった。

 

 彼女はずっと、人に優しく接していたけれど、一生、独身だった。そして、私に、なにかを教えてくれた人だった。