oohama5656's blog

日々の思いを言葉に出来るといいなあと、書いています。

映画 私が棄てた女 

 遠藤周作の小説で、もっとも、印象に残っているのは「海と毒薬」と「私が棄てた女」だ。だから、 浦山桐郎の監督した、「私が棄てた女」には興味があった。

 

 貧乏学生だった優柔不断な主人公は、ブスで無知な女ミツと関係をもって、棄てる。主人公は、特別悪い奴ではない。むしろ、時々、思い出したり、売春していて、ハンセン病にもかかったらしい女に会ってやったりする。しかし、実はこういうことが、一番ずるいんじゃないかと思う。弱いことこそ、悪なのだ。 

 

 原作ではハンセン病施設に送られて、実は違っていて、それでも、なお、施設に留まって献身するが、交通事故で死亡することになっている。そこは、描写がむずかしいので、老人ホームで働いていることになっている。また、主人公と妻との恋愛の経緯、ミツに主人公を脅迫するよう、貶める友人との話は、遠藤周作的世界観でいいなあと思う。

 

 この映画の美しい場面は海での逢い引きの瑞々しさと、ミツの出身とされる、福島の相馬馬追いの描写だ。とても、清らかで、主人公がミツを忘れられない理由である、素朴な純情さが出ている。

 

 そのあたりを、特別ハンサムではないけど、感じのいい容貌の河原崎長一郎が、演じると、とても、ぴったりくる。荒々しい若さもあって、魅力的だ。平凡な卑怯者って、ありふれていて、逆に演ずるのが、むずかしいと思う。とても、複雑なものを抱え、平凡が見えてるから、説得力があるのだと思う。どこか、無頼のふちにとどまっている、印象がある役者だったと記憶する。

 

 代表作といっていいのではないだろうか。映画での仕事は見たことなかったので、よいものを見せてもらった。

 

 ミツを演じた小林とし江もとてもいい演技をしていると思う。容貌もかわいいと言ってもいい。肉体のみずみずしさ、少女から大人になる感じも、とても、リアルだった。原作の女の精神性を表していた。 

 原作では、ほとんど、言及されていない妻になる人を浅丘ルリ子が演じていて、だめな主人公に魅力を感じて、執着する様子があって、主人公にふくらみがでてよかった。ミツの足をひっぱる友人のすさみかたもリアルだ。

 

 映画自体はちょっと思うところがある。それを見てても、原作のもつ、女の母性、凡人の悪とはに、役者の存在性自体で迫っていると思う。

わたしが棄てた女 (講談社文庫 え 1-4)