うちの旦那はんはテレビをほとんど、見ない。芸能界にも興味がない希有な人だ。その人が唯一聞いていたラジオはビートたけしのオールナイトニッポンらしい。そして、アイドルだと小泉今日子だ。
小泉今日子が気になるのは某大学の文化祭のイベントに出演して、大騒動になったとき、そこのサークルでいじめられてたからだ。
あの日、芸能の話についてこれず、かといって、つっぱって、虚勢をはって、人をやりこめる青年は一人で、屋台の焼きそばをイベント中、焼くはめになったらしい。
そして、秋晴れのさわやかな日、小泉今日子の コンサートイベントの運営がめちゃくちゃになって、文化祭が中止になった。そして、誰にも食べられなかった焼きそばは、ゴミ箱に叩き捨てられた。そのとき、ひとり、彼は号泣した。あんなに泣いたことはなかったと。小泉今日子を見ると今でも、たまらなくなるらしい。こういうのも、ファンというのかもしれない、なぜなら、一生忘れられなくなったから。
この前、『あまちゃん』をみていると、ちらっと見て、今でもちゃんときれいにがんばっているんだなあと言っていた。
あのころ、たぶん、いじめたものもいじめられたものも小泉に対して、なにかを切実に求めていたのだと思う。アイドルに向こうにある何かを。大人がコントロールしたがっていた何かを。「あまちゃん」を見ながら、この３０年のことを感じてた。
傷ついて、心を閉ざしている人に矢のように届くものをもっている人がいる。確かにそういうことはあるのだ。
